[携帯モード] [URL送信]
ピエロ




パチパチ…

「………ぅ…?」

何かが焼ける音に目が醒めたら、また違う場所だった。
重たい頭を上げて、周りの様子を伺う。

甃(イシダタミ)の冷たい印象の部屋だ。
壁に寄っかからせられていたのか、背中がひんやりしている。

薄暗くて、炬(タイマツ)がなければ真っ暗になるだろう。
(焼ける音はこれだったのか…)
部屋の右手は鉄格子になっていて、まるで地下牢だ。

今度は何…?

自分の体を見れば、防具は取り去られ、中に着ていたらしい着流しだけ着用していた。
こんな部屋じゃ時間もわかんない…

カシャン、

「!…、な、にコレ…」

腕を動かそうとすると、上でひとまとめにされて手枷が付けられていることに気付く。
頭上の壁に突き出た金具に、手枷の鎖が繋がれて…

…これは…監禁ってやつか?

「猿飛、佐助…」









『!…………拷問、決定だね。』









間違いない。
あのお兄さんだ。

過去に付き合った女が、妙に楽しそうに話していたのを覚えている。
確か、ゲームの中のキャラクターだったっけ。

…じゃあ、俺は今ゲームの中に居るのか…?

「………ありえない…」

ならここは、戦国時代だ。

武田の人…ってのはつまり武田軍の人間か、てことだろう。

猿飛佐助が武田の忍ってことなら、俺は墓穴を掘ったことになるな…。
武田の人じゃないってはっきり言っちゃったし。

つか、拷問ってことはようは武田に偵察しに来た忍か何かとでも思われてること必須だ。

「…………はあ…」

なんで生かすんだろ。
いっそのこと一思いに殺してほしい。














…ほんと。














「あ、起きた?」

「!…。」

天井を見上げると、あのお兄さんがいた。
天井に四角く空いた穴から逆にぶらさがっている。

気付かなかった…。
流石は忍、なのか?

随分人間離れしてるけど…。
ゲーム内はなんでもありか…

「おはようございます…
気分が最悪なんですけど。」

ニッコリと上にいるお兄さんにむかって微笑む。

「アハー…余裕だねぇ。
驚かないんだ。」

すたっとお兄さんは天井から床に見事着地。
さっきと変わらず迷彩の服だ。

お兄さんは俺の前まで歩いてくると、しゃがんで膝に肘をつく。

「で?言う気になった?」

「…勘違いも甚だしいですね。
僕は貴方が想像しているようなたいそうなひとじゃないですよ。」

笑顔を顏に貼り付け、口調を変え…

いつも通りに。

お兄さんの片頬がピクッと一瞬ひきつった。

「またまたぁ…
調べたけどやっぱりあんた武田軍じゃないね。
武田軍でもないあんたが、何で俺様みたいな一介の忍の名前知ってんのかなぁ?」

ニコー

お兄さんも目を細くして首を傾げ、覗き込むように俺に微笑んできた。


…感情のない、笑い…。
この人も、作り笑いなのか。
そりゃ忍だしね。
あたりまえか…。

…あ、だから俺疑われてんのか?
作り笑い作ってるから。
…最初から俺ダメじゃん(笑)


「貴方、結構有名ですよ?
そんな派手な恰好してるからじゃないですか?」

「それ根本的な答えになってないの分かってる?
まず武田の武装してたってことから説明してほしいな。」

……………。
そりゃそうだ。
でもそう言われても、弁解のしようがないじゃないか。

元々俺にも訳がわからないんだから。

「……僕を拷問しても、何も出てきませんよ?」

「………。」

出てくるのは、お前にとって意味不明な未来の事ばかりだかんな。

「…あんた、綺麗だよね。」

「…褒められても何も出ませんって。」

「俺様、気持ちいい方の拷問希望するわ。」

「……は?」




(いやな予感)

←*#→

4/35ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!