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灰色時々迷彩




不意に

ざぁざぁと雨の音がし出した。

「…………?」

目を開くと、見えたのは落ちる雨の雫と一面に広がる土の地面。
空は曇天模様だ。

「…あれ?」

何が起きた?

俺は部屋にいたはずなのに、なんでいきなり外に…。

やけに重い自分の身体を見下すと、何やら赤い防具を着込んでいて手には一本の刀を握っていた。

防具はすっかり濡れていて、俺も長い間ここにつっ立っていたようにびしょ濡れになっている。

「………………。」

確か俺は、刺されて、倒れた。
…確実に死んだはずだ。

俺は周りを見回す。

濡れた地面には赤い旗やら銃やら刀が沢山落ちていて、それと同じくらいの人が倒れていた。

…まるで、戦争の後みたいだ。

「…っ…」

口と鼻を急いで塞ぐ。
意識しはじめた途端に臭いだした、血液の鉄の臭いと火薬の匂い、それとたぶん死体の臭い。


なんで俺はこんな所にいるんだ?

刀を持って…

皆、…死んでいる。

死んで、倒れて、














「何してるの?」


「!」

不意に誰かから話かけられた。

ばっと振り返ると、そこにいたのは迷彩柄の異様な恰好をしたお兄さん。

「こ、んにちは。」

とりあえず、呼吸気管を押さえていた手を退かして、ニコリと微笑んでおく。

そうするとお兄さんがビクリと身を揺らした。

(………?あれ…
この人どっかで見たことある…。)

「…………、あんた、武田の人?」

「たけ…?いえ、たぶん違います…」

「は?」

「…え?」

……………。

沈黙が流れた。
雨が地面を打つ音だけが、一際大きく耳に入ってくる。

「あの…?」


















「どこの間者だ?」

「!!」

声を掛けられた時とは全然違う、すごく低い声が地を這った。

耳の奥でわんわんとそれは反響し、手から力が抜けて刀が落ちる。

お兄さんは俺を睨みつけていて、俺は蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れなくなっていた。

刀が水音を立てて、地面に落ちた。















怖い。















怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。















「か、患者…?なんですか…それ…」

やっとのことで絞り出した声は弱々しくて思わず笑っちゃいそうになった。
唇が震えているのが自分でもわかる。

確かに俺刺されたけど…
病院がこの状況に何か関係あるの?

こんなにいっぱい人が倒れてる、この状況に…

「…しらばっくれる気か?
見たところ、あんたそんなに強くないだろ?
早く答えた方が身のためなんじゃない?」

…何を言ってるんだ?
この人…。


(迷彩…)


大体、何でこの人はこんなあっさりしていられるんだ?


(額当て…)


周りが見えてないんだろうか…?


(オレンジに近い、茶髪…)


「長く待つほど、お人よしじゃないからねー俺様。」


(俺様、口調…)



あぁ、思い出した。



「猿飛、佐助…?」



「!…………拷問、決定だね。」















ドス、


「かはっ…」

お腹に鈍痛が走った。
見事にみぞおちに命中している。

途端に視界がおぼろげになって、迷彩が見えて、意識は途絶えた。




(なんて無情な)

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あきゅろす。
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