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さようなら世界




「今まで…
私の事騙してたの!?」

うるさい。
騙してなんかねぇよ。
お前が勝手に俺に取り付いてきたんだろ。

「答えなさいよ!!!!
いっつも笑ってばっかり…!!」

それが俺なんだから仕方がないだろうが。

「あんたなんか…!!
だいっきらい!!!」

大嫌いで結構。
お前なんかどうでもいい存在だ。

「だいっきらい!!!!」

グサリ、

「……つぅ、…」

「……!!」

カランカラン、

俺の血液がついた包丁を落として、彼女は痛みにうめく俺から一歩、二歩と後退りする。

「…はっ、…あーあ…。
刺されちゃいましたね…。」

腹にやった手を見てみるとどろりとした粘着性のある血液で真っ赤になっていた。

「どう、するんですか?…コレ。」

ニッコリと、いつも彼女にしている笑顔をしてあげる。

「ぁ…あぁ…あ…ぁああ…」

彼女は目を見開いて得体の知れないものでも見ているようにただそれだけ。

つんざくように痛む腹を再び押さえて力が足から抜けて俺はフローリングの冷たい床に倒れた。

「…っきゃあああああああああああ!!!!!!

ゆっくりと、俺は瞼を閉じた。

すると、どこか赤みが射したあの黒が視界を支配する。

俺…死ぬよな。

…端から漆黒が、じわりじわりとその黒が飲み込んでいっている。

遠くで彼女が部屋を出ていく音が聞こえた。

「ははっ…逃げたよあの女…、」

口端が自然と上がる。

俺思うんだ。

一人になりたいって。

どうせ辛い思いするなら、世界から皆が消えてしまえばいいって。
周りが消えてしまえばいいって。

でも、無理だった。

消すためには殺さなきゃいけないだろ?
殺す勇気が俺にはなかった。
小さいんだ俺は。

それで、皆が消えるのが無理なら自分が逆に死んで、一人になればいいと思った。

…でも、無理だった。

結局は自分のことが好きなんだ。
自分が大好きで、大切で仕方がないのに。
その事実から目を背けて。
小さいんだ俺は。

だから、

誰かに殺してもらおうと思ったんだ。

人を犠牲にするなんて
ほんと俺って最低…

こう思っても心底で俺はどこかで喜んでいる。

やった!
もうこれで傷つかないで済むんだ!

…自分が大事だから、だからこそ俺は死のうと思った。
笑うことに疲れたから。
ああ、…小さいんだ俺は…。


俺の意識は完全に闇に飲み込まれた。




(おやすみなさい)

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あきゅろす。
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