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飛び立つ現実




『お前、いい力持ってんな。』

その声は突然天井から降ってきた。

畳の生活感のない部屋にのんびり寝そべっていた俺は当然固まる。

男…だろうか。
まだ若い男の明るい、楽しそうな声が部屋に響き渡りその余韻を残してやがて掻き消えた。

木造の天井をガン見し、再びその声が何か確認しようとするが流れたのはしばらくの沈黙。

眉間に皺を寄せ、腑に落ちないながらも寝返りをうって俺は平穏を決め込む。

『おいおい無視はないだろ。
少しぐらいは反応しようぜ?』

っ!

また聞こえたその声に今度はガバッと身を起こす。
周りを見回し、気配を探るがどこにも人がいる様な感じがしない。

いや、いるはずがないのだ。
この場所は謂わば隔離施設。俺のための。
人ならざるが故だ。
背中に生える翼が現実を知らせる。

アイツらが俺を必要とするのは決まって暗殺の依頼の時のみ。
しかしこの声の主の言いようから見ると、そういうことではないらしい。
いやアイツらこんな気配を消せるわけがない…

そして俺は初めて口を開いた。

「誰…?」

翼を一回羽ばたき、伺うように小声で。

『おぅ、まあ気にすんな。』

んだそれ。

「姿も見せないで何なのその言い様。
ちょっとむかつくんだけど?」

その気になればこんな隔離施設なんて吹き飛ばせる。
いぶり出してやろうか?

『まぁまぁそんないきり立つな(笑)
うん、まぁ…"管理者"とでも呼んでくれ。』

「管理者?…何の。」

『世界、のだ。』

………………。

「へぇそう。」

『絶対ぇ信じてないだろお前。』

だって無理だろ。

『ふん、まぁ信じるか信じないかはテメェ次第だ。』

都市伝説か。

『俺が出てきたのは他でもねぇ。
その力俺のために使ってくれねぇか?』

「!…」

その力…

竜の力、か。
何人の野郎がそう言ったことか。

"俺のために力を"

…まぁいいけどな。
気にしてないし。
むしろ便利だよ。

「わかった。
でどこの誰を暗殺してくればいいのさ?」

『話が早くて助かるぜ。
実はなぁ、俺のお気に入りの世界のお気に入りの野郎共がどうも死んじゃいそうでな。』

「…………。」

ツッコミどこ満載だが、聞いておこう…。

『管理者は手を出せないっていう仕来たりでさぁ、俺は手も足も出ねぇんだわ。
だからよ、ここで戸籍も無くて知り合いも特にいねぇあんたに一つ頼もうってわけ。』

「…………はあ。」

よくわからん。

『まぁ行けばわかるさ。
あ、そうそう。
行ったら引き返せないけどいい?』

「…はぁ。」

そりゃ殺しは引き返せないよ。

『オッケー。
じゃ、』

ぐわん

「狽!」

言葉の途中で突然視界がグニャリと歪んだ。




(突然変わる視界)

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