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傍観する存在




「…チッ…」

お兄さん舌打ちしないでよ。
そんなに俺とシたかったのか…
(とことん気持ち悪い…)

真田君は続けてとばかりにこちらを凝視。
(そんなに見なくても…)

ツッコミ処の多い二人だと俺は認識しつつ、傾けていた頭を戻して、再び口を開いた。

「先ず言っておきますと、僕は間者、?ではありません。
…これはお兄さんにも何度も言わせてもらいました。
それと、貴方方に敵対する意思は全く持っていません。」

二人黙って俺の話に耳を傾けているためか、沈黙が耳に痛い…。
流暢にとは言えないが、俺はすらすらと話続けた。

「しかし何故僕があの、戦場跡のような場所で、武装していたのかは説明しかねます。
説明できません。
僕にもさっぱりなんです。
…僕は貴方方を傍観する側にいたはずなんですから。」

ピクッと、二人がここで反応した。
俺はサッと身構える。

予想通り抗議の声はいきなり上がった。

「傍観…?」

「傍観?何ソレ。
意味わかんないんだけど名前ちゃん。
"側"って何?何かの組織のこと?」

俺はにっこり笑顔になって、ハッキリと言う。

「簡単に言えば貴方方が架空の存在でしかない、尚且つ貴方方のこの時代よりずっと進んだ異世界です。」

「異世界、でござるか…?
…っしかし、そのような…」

真田君は若干混乱しているみたいだ。
お兄さんに至っては眉間に皺を寄せて、怪訝そうに俺を見つめている。

(だからやだったんだ、否定の言葉なんて聞きたくない…)

長くに渡りそうなこのやり取りに早くも嫌気が射してきた。

「貴方方は…僕の世界ではゲーム…遊戯?として一部の人達に親しまれているんです。
僕はそれを人から聞いただけなので、名前と容姿ぐらいしか知りません。
なので"猿飛佐助"も"真田幸村"も知っていたんです。
…あとは歴史の本で聞いたことがあるくらいで…。
残念ながら勤勉ではありませんでしたから。」

「遊戯って、何を俺達で遊戯するっての?」

「天下統一を。」

たぶん。

「天下統一を遊戯…とは、如何なものか?」

…確かに意味がわかんないか。

「まず、貴方方のうちから遊戯する人に1人選ばれ、駒になります。
その人が操作して貴方達を動かして、兵士達や敵大将を次々と倒し、天下統一を目指すという遊戯です。
例え操作している貴方達が死んでも、天下統一を果たしても、再び遊戯を始めることによって振り出しに戻ることができます。
あくまで、貴方方は架空の人物ですから。」

「な、なんと…っ」

「……………、」

二人の目は些か見開かれていた。
自分が人の駒になっていたと聞かされたらそうせざるを得ないだろう。

「これは事実なんですが…
異世界なんて僕も存在していることさえ知らなかったので、貴方方の気持ちはよくわかります。
…なので、又は数世紀先から来た者だ、とでも思っていてかまいません。
異世界だと言っても、格好や存在の多少の誤差があるだけですから。
信じられないならば、信じなくても結構です。
すべては貴方方次第なので。」

…都市伝説かよ…
都市伝説以上の出来事だとは思うがな。

「数世紀先…それも随分無理があるでござるよ…。」

真田君がカクッと項垂れる。
真田君の頭はどうやらもうパンク状態らしい。

「知っています。
僕も信じられませんから。」

「にしては落ち着いてたよね?
俺様が見つけた時。
…丁度そんな笑いをして呑気に挨拶してきたっけ。」

俺の顔に張り付いたまま、剥がれることがない笑顔。
それをお兄さんは指差しながら嫌味とでもいうように口角上げた。

「それは唖然としてただけです。」

「焦んなかったの?」

「…僕は昔から唖然すると逆に冷静になるんですよ。」

「ふーん…」

「周りの状況が状況でしたし、それに…」

「それに?」

「僕は向こうで、殺されたはずでしたから。」




(硬直する真田君、どこか納得気味のお兄さん)

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