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純粋無垢な主




「狽ィ主はっ!!
さっ、先ほどは失礼いたした…!!///
先に入浴している者がいたとは知らず…っ」

「え?何?
名前ちゃん旦那と風呂場で会ってたの?」

「………。」

返事を返す気力?
ねぇよ

あのあとしばらくしたらお兄さんが来るだろうと思って風呂場の中でじっとしていたら、…予想通り俺は蒸し上がってしまった。

ダルくて動けなくなってた俺だったが、後で来たお兄さんに助けられて、
(頭ぼーっとしてたからあまり覚えてないがたぶん)
お兄さんに服を着せられた。

で、なんやかんやでお兄さんに手を引かれつつ歩いて、冒頭に戻る。
気付いたら先ほどの青年がいる部屋に入室していた。
青年は白地に赤の縦線の入った着流しを着用している。

体は火照(ホテ)って頭が朦朧(モウロウ)としている俺。
正直何にもしたくない。
つか何にも考えたくない。

とりあえずお兄さんに導かれて、あわあわとしてお兄さんにわけを伝える青年の前に正座をした。

「あー、なるほど。
だから旦那真っ赤になってたわけか。
名前ちゃんは名前ちゃんで風呂場で軽く失神してたし(笑)」

「な、なんと!?
それは誠か…!!;」

「…………。」

旦那って…じゃあこの人がお兄さんの主なんだ…。
若いなぁ。

俺の斜め前に座ったお兄さんが、何も答えない俺を不審に思ったのか、覗きこんできた。

「名前ちゃーん?
大丈夫?」

「………はぁ…」

「ため息は返事じゃないよ〜。
…わ、まだ熱いね。」

「……ん、」

頬に冷たいものがあたった。
気持ちいい…。

「擦り寄ってくるなんて名前ちゃん積極的〜♪」

…お兄さんの手だったみたいだ。
思わず嫌な顔をしそうになるが、気持ちいいのは事実だ。
その手を掴むと首の項(ウナジ)に当てた。

冷たい………

「仲が良いのだな二人は…。」

「アハーそう見える?」
「別にそんなんじゃない、です…」
↑同時

お兄さんの手が温くなってきたため位置を手首に変える。

「ともかく…名字殿、先ほどは失礼した…。」

「……?」

あれ、名前言ったっけ…

「佐助から聞き申した!」

俺の表情を読み取ったのか青年はそう言った。
お兄さんを見るとニッコリ笑顔。

そうだろうと思ったよ…

お兄さんから聞いたっていうことは…、あの事も知ってるんだろうな。

「…改めまして、名字名前と言います。
風呂場のことは全然構いませんよ。
そんな気に病まないでください…。」

男同士なのにそんな反応されても困るっての…。

火照りも冷めてきたからお兄さんの手を放した。

「むぅう…っそう、仰るのであれば…
…名字殿は心が広いのですな。
有難う。」

「…………っ、」

「…………。」

青年はニッコリと屈託のない笑顔を浮かべた。
その笑顔に一瞬目を見張ったが、すぐに目を離して起こった変な動悸を収まらせる。

…お兄さんがこの人のこと苦手な理由がわかった気がした。
(俺も、この人苦手だ…)

「佐助から聞いていたが、名字殿は誠美しゅうございますな。
間者と疑われていると聞いて、男だと思っておりました。
若い娘の着物の有り合わせがこの城にあったらよかったのでござるが、生憎女中がいなく…。
すぐに用意させる故、それまでは某の古着で、我慢していただきたい…//」

申し訳なさそうに話す青年。
照れてて可愛いらしいな。

…うーん、女中がいないのかこの城…
ってことは男ばっかり。
華がねぇ…←

…つか風呂場の時から思ってたけど、どうやら青年は勘違いをしてるようだ。
若い娘の着物って、俺女じゃねぇし。

「今さらかもしれないですが、僕は男ですよ。」

困ったような笑いを顔に浮かべて青年にそう言うと、えっ、と青年は身体を固めた。

「…えっ、」

青年が俺の顔を見つめる。
顔見ても仕方ないんじゃね?

表情を変えない俺から、不意に笑い声が聞こえて青年は第三者に視線を移す。
もちろん俺も。

「いやー、旦那って面白いねぇ。」

クスクスとお兄さんは笑っていた。

その顔を見て俺は察する。
ああ、これは…

「わ、わざとか…佐助…っ!///」

青年はわなわな震えながら、みるみるうちに顔を真っ赤にしていった。
お兄さんはそれを見てさらに笑う。

確かに面白い(笑)
こういうタイプの人ってのは騙されやすい。
お兄さんにいいおもちゃにされているみたいだ。

ってそれに俺巻き込まれたんだよな…。
まさか風呂場のもお兄さんの計算のうちだったのか?

ジーッと笑っているお兄さんを見つめると、目が不意に合った。

「………(ニィ)」

まぁなんて意味深な笑顔。
(体に変なことされてねぇといいけど…)
青年は気づいてないみたいだ。

「ご、ごほん…//
名字殿には申し訳ないことばかりでござるな…//」

「いいんですよ。」

青年に笑顔を向けてやる。

悪いのはそこの忍だ。

ふっ、と一瞬青年は哀愁を帯びた表情をしたが、そんな顔はどこへやら、柔らかく微笑んだ。

ズキンと心が痛むのを感じつつ、目をそらして改めて青年を見直した。

…。
この人、見たことがある…。

頭に浮かんでくるのは赤っぽい衣装を着てる…武将…。

あの女の声が聞こえてくるような気がした。

「この城に置くことになった、ことは佐助から聞いておるか?」

(佐助の主でねっ)

「はい…。」

(甘味好きの純粋な子なの!でもまあ私は裏では黒いって予想してるけど、)

「理由は、お主からの情報流出を防ぐため。」

(後ろで長い髪をひとむすびにしてて、あ、これ尻尾ね。)

「…………。」

(お館様バカでまさに戦国の忠犬ゆっきー!)

「名字殿、固く口を割らないそうだが、」

(トレードマークは首にぶらさがるおこづかいもとい六紋銭、トレードカラーは赤、武器は二槍、)

「…………。」

(四字熟語は、天覇絶槍!)

「話してくれるな?」

(その名も、)

「………真田幸村、か。」

「え。」

「む?」

「………あ。」




(墓穴また掘ったかな)

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あきゅろす。
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