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怖がり道化師




「てっきり俺様利用されたんだと思ったんだけどなぁ…
あんたが死ぬために。」

笑っているが探るような目付きで、笑っていない。

あの獣の目ではないけど
あの目を思い出させる眼

さぁあっと頭から血の気が引いて、背中にぶわっと冷や汗が吹き出た。
唾を飲み込み、すぐに目をそらす。

「…………まぁ、俺様の名前を知ってたし、あんたがただ者でないことは確かだよね。
…死ぬために忍の名前調べる奴がいるわけないか…」

独り言のようにぶつくさと呟いていうお兄さんをちらりと見ると、お兄さんの目は元に戻ったようだ。

怖いんだよ、あの目…
すべてを見透かされているような気がしていやだ…。
視線だけで射殺(イコロ)してしまいそうだ。

(殺されたくないって思ってしまう自分はもっと嫌だ…)

(利用したってのは…あながち間違っていないな…)

「…絶対に死なないって、なんでわかるんですか?」

恐怖のお陰で俺は冷静さを取り戻したらしい。
自然と敬語が俺の口から流れ出て、表情は笑顔を取り戻した。

作り笑顔を。

お兄さんは驚いた表情をして、残念だなぁと呟く。
(何が残念なのかさっぱりだ)

「あんたを殺したあとしばらくして、信じらんないけど息を吹き返してたんだよねぇ…
それでさ、俺様もう一回、あんたの胸にぶっ刺したの。」

とんとんと人差し指で左胸を押される。
俺はその感触に覚えがあってびくりとした。

苦無の痛みが、確かにそこに在ったことを体が覚えているのだ。

「それでもあんたは生き返った。
刺してるうちは死んだままなんだけど、抜いた瞬間にあらビックリ、元通り!」

お兄さんの語り方に呆れた俺は笑顔だがジト目で、お兄さんのまぶしいほど爽やかな(作り)笑顔を見つめる。

…そんな通信販売みたいな軽い調子で言わないでくれ。
俺にとっては重大なことなんだよ…。

「まぁ俺様はそれで止めた。」

「"は"?」

「ん、俺様忙しいって言ったでしょ?
任務があったから、そっちに行った。
あとは部下に任せて。」

「…物好きな部下もいるもんですね。」

それどういう意味?
…まあそんなこんなで、部下にあんたを殺害させてたわけだけど、」

生々しい言い方をよくもさらりと…

「合わせて578回。」
















「…ぇ、え?」

淡々とした調子のままで言われ、思わず聞き逃したその回数。
…聞きたくない反面、自然と口は聞き返していた。

「578回、あんたは生き返った。」

ニッコリ、

…笑えねえよ…

「…そ、な…」

思わず笑顔を崩してしまう。
絶望的なその数…
…俺は…本当に、死ねないのか…?

「……………とりあえず千回まで行っとく?」

アハーなんちゃって、というお兄さんはずっとにこやかだ。

…なんだか泣きたくなってきた。

「じゃぁ…これから僕は、どうなるんですか?
殺すこともできないなら…
逃がすこともできないのでしょう?」

猿飛佐助の名を知っているから。

「……………そうそれなんだよねぇ。
とりあえず、あんたが不死身ってことは極秘にしてあるから、…」

「!」

カシャン、と音を発てて、お兄さんが手枷を外してくれる。

「今日からあんたは上田城に居候♪ってとこかな?」

上田城…ここの名前か?
歴史とか全く知らないから城とかも全く知らない。
はぁ、と頷くしか俺にはできなかった。

手枷が外れた手首には先程傷付けた時の傷があり、地味に痛みを発する。
…ずっと変な格好だったからか、肩も痛い。

「…要は城に軟禁、するんですよね。」

「そういうことー♪」




(生活、…生きた活動…)

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