ロストウォーリア短編 消えない傷(物理的に)/side.S(怪我ネタ) それは、俺が22歳だったとき。 区役所に就いて初めての長期休暇、一人ドライブが趣味だった俺は、国道を走っていた。 名知から豊田小牧を越え、豊橋川まで来て。時々道の駅なんかに寄って、甘いご当地スイーツを買ったりした。 特に途中で寄った宮一市の林檎ソフトクリームは美味い。ほとんど毎回そこでソフトクリームを買い食いしている。 そして、夕方。もうすぐ豊田小牧を抜け、名知に戻ってくる…と思った瞬間。 逆走してきた違反車が、俺の自慢の青い車体に突っ込んだ。 衝撃音が辺り一面に響く。俺の身体も一瞬宙に浮いた。 とりあえず無事を主張するため、車から降りる。痛む目と身体のまま近くの店へ入り、ここの住所が分からない俺の代わりに救急車を呼んでもらった。そして、そのまま俺は近くの病院へ搬送された。 再び目を覚ましたとき、左目は何かに覆われていたようで見えなかった。病院に着くなりすぐ手術をされたからだろうか。微かに麻酔が残った身体も重かった。 俺が起きたことを知った担当医―従弟である黎明は、俺の負った怪我について細かに説明してくれた。 特に命に別状はなく、回復すれば普通に日常生活は送れるそうだ。 しかし左目にはガラスの破片のようなものが刺さっていたらしく、もしかすると視力に影響があるかもしれないということだ。取り除くのに苦労しただろうから、気にしないふりをした。 俺は残念な気持ちでいっぱいだった。おそらく一人ドライブはもうできないだろう。趣味とはいえ、毎週のように行っていた習慣のようなものなのだから。それでも仕方ないと割り切るのに、そう時間はかからなかった。 今は、俺のこの傷まで愛してくれる彼奴のおかげで、精神の安定を保てている。 [*前へ][次へ#] |