ロストウォーリア短編 俺の可愛い車掌さん/1925パロ【蒼杏】 「次は、名知富士。お降りの方はボタンを押してお知らせください」 時刻は夜10時。 俺は今、恋人である杏寧が車掌を務めるバスの、ちょうど後ろの席にいる。 「この停留所を過ぎると、次の名知が終点となっております」 愛しいその声を間近で聞いていながら、仕事中の彼にちょっかいを出せないのを恨めしく思う。最高の楽しみだ。 俺たちは交際している。たまたま通勤中に助けた彼が同じ会社にいたことを知り、そこから仲を深めていった。 バスが停まり、乗っていた数人が一斉に降りていった。 名知駅に近い名知富士停留所で降りる客は多い。今日も俺以外はみんな降りた。 そんな二人っきりの車内、俺の理性はぎりぎりで。 「…杏寧」 「何だ?蒼月」 早く俺の腕に抱かれろよ。そう思っていても言えない。 「もうちょっとだけ、スピード上げないか?気づかれないくらい…」 「…わかった、そうするな」 悪戯っぽく笑う彼を見て、到着が待ち遠しく思えた。 「終点だよ、蒼月」 「事務所までついていくから」 「…了解」 走るバスが事務所に着くまで、そう時間はかからなかった。 [次へ#] |