M8 奪われた時間【穂然/過去編】 あたしの仲間たちが奪われたのは、ここ最近のことではないらしい。 でも、それでもいつまでも、縛られて動けないままなんだ。 「あたしのこと、連れ出してよ」 中学生になったあたしは、毎日楽しく学校に通い、仲の良い友達と遊んで、自分で言うのも何だけど…勉強や風紀委員の仕事も頑張ってた。毎朝ヘアアイロンで癖毛を伸ばしてポニーテールにすると、自然と気合が入ったものだ。 そんなあたしにも中学2年で彼氏ができて、ちょっとだけ浮かれちゃってた。 それが後々、あの事件を引き起こすまでは―。 中学3年生。彼氏、親友、友達2人、そしてあたし。このメンバーで過ごせるのはたぶん最後の夏休み。 あたしの彼氏は張り切って予定を立てていた。そういうのが好きなタイプらしい。 「じゃあさ、この日に近くのショッピングモール行こうぜ!」 「いいねー」 「俺も賛成!」 最終日も近い日曜日、5人で出かけることになったーのだが。 夏休み前、突然の委員会。 「最終週とその前の土日、ボランティア活動を行ってもらう。風邪や法事などで休む場合は8時までに学校に報告」 せっかくの休日。あたしは、ショッピングモールに行けなくなった。 「はぁ…ようやくボランティア終わったぁ!」 他クラスの委員と喋りながら帰宅して、家の近所まで来ると、周りの人の目線がいつもと違った。 テレビでは、あたしが今日行くはずだった通り沿いで起きた事件を放送していた。 翌日。何やらあたしの家の周りが騒がしい。怪しいと思いながらも外に出てみると。 「あの、どうされ―」 大人達があたしの壁となり、一斉にマイクとカメラを向けてきた。 「…について何か一言」 「ご友人が…ですが、どう思われますか」 「犯人に対して…」 マシンガンを撃ち込まれ、あたしは何もかも分からないまま自我を失った。 それからのことは何も覚えていない。後で聞いた話ではとにかく取り乱していたらしいけれど。 ―なんであたしはそこにいなかったの? ―みんなじゃなくて、あたしじゃダメだった? 新学期が始まって、あたしの彼氏の机には花、親友は転校が決まった、そんな近況報告を受けた。 [次へ#] |