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ヴァプール帝国立学園
花園の再会【カタリナ】
これは、僕がまだ生きていた…そうだね、晩年の話だよ。

お産を控えた頃、僕の本が出版されることになり、それに関してのイベントの予定まで組まれた。自叙伝もトレーニングの本も初めて書いたのに、こんなに大々的に宣伝してもらえるなんて、と幸せな気分だった。
そして産休が明け、迎えた出版記念イベント当日。僕が現れる前からたくさんのファンたちで埋め尽くされた会場に、驚きと喜びが混ざる。はやる気持ちを抑えつつ、脳内でリハーサル。準備は万端だ。
ステージに上がると温かな声援で迎えられ、作品についてのトークも順調に進む。少しの休憩を挟んで、サイン本のお渡し会も始まった。
僕の言動一つひとつに、順番の来た女性が甲高い声を出す。グループで固まってわいわい騒ぐ人たちもいた。そんな婦女に紛れ待っていたのは…。
「…っ!」
7,8歳くらいだろうか、艶のある白髪にふわふわな狐耳を持つ身長の低い少年。思わず感嘆の声を漏らす。狂おしいほど綺麗だった。
「え、あ、あの…ボク、カタリナさんに憧れて、バレエ始めました…!まだ、レベル低いクラスで…下手くそなんですけど…」
林檎のような紅潮した顔で、精一杯の想いをぶつける少年が、愛おしくてたまらない。僕は思わず、彼の頭に手を置いた。
「嬉しいですー…これから、もっともーっと、上手くなっていくはずですからー…一緒に頑張りましょー?」
励ましの言葉が自然に紡がれてゆく。格好つけすぎた気もして、気恥ずかしくて黙ってしまう。気まずいのに心地良い、不思議な沈黙を破り、
「ボク、いつかカタリナさんとバレエしたいです!」
と、少年の熱気を帯びた声。もうすぐこの時間は終わってしまう。熱意と寂しさの間で揺れる、そんな彼にエールを送る。
「うん、僕も君と同じ舞台に立てるの、楽しみですよー!」

何度も舞台に立つうちに、会いたい気持ちは増すばかり。
あんなに強く惹かれたのは、いつぶりだろう。また彼を目にする機会はないのか。一緒に最高の表現者を目指せないのか。
彼のことが頭から離れないまま、バレエ団の新人たちと次の舞台に向けての顔合わせの日がやって来た。たくさんの少年少女に紛れ、現れた一人に目を奪われる。
サラサラの白髪。特徴的な狐耳。伸びたはずなのに相変わらず低い身長。
「カタリナさん!!ボク、カタリナさんと一緒に、世界一の舞台目指しますから!!」


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