短編
HAPPINESS(緑川×尋斗)
HAPPINESS***
雪が降りそうな位空気が冷たい夜。
俺は一人公園のベンチの上。
どうしてもあの事が頭から離れず気分が墜ちてしまい、隣りにいた緑川に当たってしまいそうで。
コンビニに行くと伝え部屋から逃げてきた。
はーっ、と息を吐くと白くなって現れてすぐに消えた。
胸のモヤモヤもこの息みたいに吐いて消えればいいのに。
モヤモヤ。
その原因はコートのポケットに潜んでいる。
ポケットに手を入れていると嫌でも存在を意識してしまう。
バッカみてぇ。そんなの関係ねぇーって捨てちゃえばよかった。
ポケットから取り出し、もう一度広げてみるも結果は当然何も変わらず。
「不機嫌の原因はそれか」
「!?」
勢い良く後ろを振り返るとそこには緑川。
手には俺のモヤモヤの原因。
いっ、いつの間に…っ!
「心配だったから探した。コンビニはいいのか?」
「う…っ」
「まぁどーでもいいけど…恋みくじ、ねぇ」
「ッ!」
初詣で優耶とノリで引いたそれ。
引く前は結果なんてどうでも良かったのに、書かれた事をしっかりこの目で見てからはそう簡単には忘れられなかった。
「凶か」
「…ん。」
「『今隣にいる人は運命の相手ではありません。近い内に去り行くでしょう。貴方から心が離れています』…って、酷くね?」
酷いけどそれ以前に…。きっと俺今真っ赤だ。
寒いっつーか、暑い。
「お前ほんっと可愛いな」
「……っ!」
「こんな結果に凹んでショック受けるくらい俺に惚れてんだ?」
「なっ!…んだよ、それ…」
「可愛いすぎて押し倒したい」
「ハァッ!?やっ、やめろよ!?」
「えー?」
えー?じゃねぇよ!
本気か冗談か分かんないけど…コイツの冗談はシャレにならん!
「つーか何様だよな、これ」
「え?」
「勝手に去ってくとか決めてんじゃねぇよ」
「……」
「こんなにお前の事好きなのにどうやって離れるっつーんだよ」
「…そっ、そんなに…俺に惚れてんだ」
「ん。惚れてる」
じっと目を見つめられて、一気に耳まで熱くなった。
緑川の想いは今までに何度も耳にしたけど未だに慣れない。
「お前さ、こんな紙切れなんかより俺を信じろ」
緑川はそれを元通りに小さく畳みながら言った。
俺はその手元を黙って眺めていた。
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