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無双
周泰×張遼
寒い日の夜のことだった。
張遼は客室として与えられた部屋をこっそりと抜け出して暗い庭に出た。
寒さに比例して星は美しく輝くのだろうか。
ふと夜空を見上げてそんなことを思った。


この不思議な世界に来てから一体どれだけの時間が過ぎただろう。
遠呂智という共通の敵を倒し今まで争っていた三國は奇妙な一体感に包まれていた。
現に今夜も何度か目の祝宴が呉の領土で三國戦国の武将を交え盛大に開かれていた為,魏の武将である張遼が此処にいるのである。
宴も終わりこのまま酔いに身を任せて眠ってしまおうかとも思ったが,この城に来る事は元の世界に戻ればもう無いだろうという妙な感慨に耽り夜の散歩などというものに繰り出した。
先程まであれだけ騒がしかった耳にしんとした音は妙に痛く感じた。


ふと,張遼は人の気配を感じる。
暗闇の中に誰かが立っているような気がするがその姿は目を凝らして見ても曖昧にしか映らない。
けれど張遼は確信を持ってその人影に声を掛けた。


「貴方も散歩ですか,周泰殿。」
「……張遼……」


黒い衣服が闇に溶け込んでしまっていて露出した顔だけが月の明かりで僅かに浮かび上がっている。
彼の褐色の肌は日の元にいたお蔭のものであるのにどうしてこうも彼は闇が似合うのだろうか。
まさかこのまま本当に,身体ごと闇に溶けてしまうのではないかと思い張遼はそっと手を伸ばす。
その手を掴むと周泰は少し乱暴に張遼の身体を引き寄せた。


「……お前が出てくるのが見えた,から待っていた……」
「それなら声を掛けて下されば良かったのに。」
「……何時もは嫌がるだろう……」
「今日はもう皆寝てしまっているでしょうからな。」


いつも体温の低い男の身体が更に冷たく感じて張遼はその身を寄せた。
触れた部分はひんやりと感じるのに不思議と寒くない感じがする。
なら部屋にでも行くかと言う周泰の手を握り返すともう少しここに居ましょう,と笑いかける。
こうする機会ももう滅多になくなってしまうだろう。


「今宵は一層星が美しく感じますな。」
「…そう,か…?」
「ええ,何故でしょうな。この様に冷えるからでしょうか。」


冷える,という言葉に反応して周泰が手を離そうとするのを強く握りしめる事で拒む。
寒くは無いですから,とだけ言うとそうかと言葉が返ってきてそのまま静寂が続いた。
ふと,手に視線を落とす。
張遼は周泰の冷たい手にじんわりと自分の手の熱が移っていく感覚が好きだった。
最初こそ自分の手が冷たくなるだけの様に感じるが,その内にまるで自分と相手の手が融け合ったのではと思えるのが好きだった。
このままずっとこうという訳にはいかないだろう。
もう子供と呼べる年では無いのだからそれは張遼も分かっている。
けれどこの手の感覚は,そんな事を微塵も感じさせずにただぬくもりと一体感だけを感じさせてくれる。
共に星を見上げるような機会がもう二度と無くとも,この感覚だけは忘れないだろうと素直に思えた。



「周泰殿。」
「……どうした……」
「……いえ,そろそろ部屋に戻りましょうか。」
「?……ああ,……」



少し冷えた頬に温かい唇があたる。
こうして貴方の横に居るのが幸せだと伝えるのは部屋ででも遅くは無いだろう。
















「星空」「ぬくもり」「幸せ」









ツイッターの診断で出たやつ使って書いてみた。
普段この2人で甘いのとか書かないので死ぬほど時間かかりました^^o
張遼さんまじでれでれやな。

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