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BSR
慶次誕生日小説(伊達,武田で小十郎落ち)
「…うぅん,まだ起きるには早いよ,」


ぺちぺちと頬を叩かれて目を覚ます。
眠い瞼を擦りながら開いた目に飛び込んだのは,眩しい朝の光と,

「早いなんていう時間じゃないでしょう,風来坊。」
「慶次殿!花見に行きましょうぞ!花見!でござる!!」
「朝からうっせぇんだよ真田幸村ァ。」
「政宗様,今日は真田に喧嘩を売らないと先程決めたばかりでしょう。」

何故か朝っぱらから人の家に上がり込んでいる4人組だった。
昨日何かあったっけとか,そういう事を考える前にやらなきゃいけない事がいきなり1つ出来る。
目の前で取っ組み合いの喧嘩を始めた2人を止める事だった。
(本当に何で朝からこんな!)


「あーもうっ,幸村!政宗!人の家で喧嘩すんなって!!」
「いたっ!慶次殿痛いでござる!」
「慶次,いきなり人を殴るたぁいい度胸じゃねぇか。」
「政宗様,政宗様を殴ったのはこの小十郎です。」
「ってお前かよ!」
「2人がいきなり喧嘩始めちゃうからでしょう。右目の旦那に殴られても仕方無いんじゃない?ったく伊達の旦那はすーぐうちの旦那に喧嘩吹っ掛けるんだから本当俺様困っちゃう!」
「あっ,佐助も挑発すんなよ!喧嘩やるんなら外で!」


外,という単語に幸村が反応し佐助に腕を掴まれたまま勢いよくこっちを向く。
花見でござる!とそういえばさっきも聞いたような言葉を繰り返して,どこから出したのかやたらとでかい重箱を笑顔で見せつけてきた。
佐助が疲れているように見えるのはその重箱が原因の半分くらいを担っているのに違いない。
それに対抗してなのか小十郎さんがこれまた大きい重箱を取りだしてきた。
しかしその中身の大半が野菜で埋めれらているんだろうな,という事は何と無く予想が出来る。
というか重箱の他にも葱の束とかがあるんだけど何それ?花見しながら齧んの?
(つっこんだら多分極殺タイムが始まるので口には出さないけれど!)


「慶次殿,花見はお好きでしょう!」
「いや好きだけどさ,何であんたらここに居るの?わざわざ花見しに京まで来たのかい?」
「ふふっ,まだ秘密!まあ今日は戦とかじゃないし安心しなよ。」
「んな事より早く行くぞ。場所無くなっちまうだろうが。」
「政宗様,既に場所取りは済ませております。」
「Oh,coolじゃねぇか小十郎!」
「いやちょっと俺まだ返事も着替えもしてないし!」
「着替えなら俺様が手伝ってあげようか?」
「全力で遠慮する。」
「さっ佐助!!破廉恥でござる!!!」
「ちょっ,旦那顔真っ赤にしながら殴んないでよね!」


騒ぐ面々をとりあえず部屋から追い出し(政宗は最終的に小十郎さんに引きずられてた)着替えながら頭の中を整理する。
昨日は,俺は確かに部屋に一人で寝たはずだ。あの4人と会った記憶も無い。
4人がそろって花見に誘いに来るほど仲が良い訳も無いし(大体さっきも殴り合ってたし),本当に意味が分からなかった。
あー,朝から頭なんか使ったら疲れちまう!
がりがりと掻いた頭の上で羽飾りがひらひら揺れる。
少し髪が乱れたがまあ別に構わないかとそのまま襖を開けた。


「花見,行ってもいいけどさ,喧嘩すんなよな。」
「政宗殿が帰ればしないでござる。」
「あぁ?お前が帰りゃ済む話だろうが。」
「言った傍から!」
「まあまあ風来坊,手出さないだけ偉いと思わなきゃ。」
「なっ佐助,それは俺を馬鹿にしているのか!」
「おいお前,寝癖がついたままじゃねぇか。外に出るんならきちんとしろ。」
「小十郎!勝手に触ってんじゃねぇ!」
「勝手にとはどういう事ですか,政宗様。」
「今度はそっちで喧嘩するのかよ!」


何なんだ?俺はこいつらの喧嘩仲裁係として起こされたとしか思えない。
未練残りまくりの愛しい布団に視線をちらりとやった後に溜息を吐いて無理矢理玄関から押し出す。
今日はもう無かったものとして全てを諦めよう。
そんな悲しい決心をして踏み出した足にもきらきらと朝の光が降り注ぐ。
天気の面だけ見れば,今日は本当に花見日和のようだ。
(ああ,こいつらと一緒じゃなきゃなあ!)


気の乗らないまま花見の場所に来てみれば,小十郎さんが場所取りしていた(させていた?)ところというのは中々に良い場所で,流石の幸村と政宗も言い合いを止めて満足そうに桜を眺めている。
急に誇らしい気持ちになってきて,どうだい京の桜は素敵だろ?なんて頬も緩んでしまう。
そうすると急にぐーと腹の虫が賛同するように鳴いてしまい,誤魔化すようにへへっと笑った。
飯にしよう!飯!と重箱を持つ小十郎さんと佐助の腕を掴む。
やっぱりこんな天気の良い,しかも桜が素晴らしい日に花見するなら楽しまなきゃ損だ!






「おい慶次,もうGiveupかあ?」
「へっ,そっちだって顔赤くなってきてるよ!」
「某は,も,もう駄目でござる…!無念!」
「旦那!酒は無茶して飲まないの!」

楽しい花見はしばらく続く内に飲み比べへとその姿を変えた。
潰れた幸村とそれを介抱する佐助が脱落,今は俺と政宗の一騎討ち状態!
長々と続いたこの戦いもついに政宗が崩れ落ち終わりがくる。
俺に勝とうなんて10年早いよ!と少し揺れる視界の中でご機嫌に言ってやった。
うとうととこのままの気分で俺も眠りの世界に沈んでしまおうか。
そんな事を考えていたら耳元でおいと声がする。
えっ,と振り向くとそこにはまだ飲み続けている小十郎さんがいた。
(大人しいからもう潰れたかと思ってたのに!)


「ちぇっ,もう俺が優勝かと思ったのに。」
「そんなべろべろになって何が優勝だ,ったく。」
「まだまだ飲めるよー!小十郎さんが潰れるまで飲む!」
「止めろ。もう飲むな。」
「飲む!負けんのやだ!」
「お前が潰れたって誰も運んでなんてやれねぇぞ。」
「負けないから構わないよ,」


俺に勝つ気でいる小十郎さんを見てけらけらと笑い声を上げる。
自慢じゃないが飲み比べで負けた事は無いのだ,今だってちょっと眠いけどまだ飲める!
そう言って傾けかけた盃が途中でぴたりと止まる。
止まる,というよりは止められたというのが正解だろう。


「もう十分飲んだだろう。」
「あんたに勝つまで!」
「勝てると思ってんのか。」
「小十郎さんこそ俺に勝てると思ってんの。」
「…じゃあ,俺が勝ったらどうする。」
「え,」
「お前は勝つ気でいるんだろう。ならどういうかけの内容でも構わねぇな?」
「え,え,それはちょっとっ,」
「じゃあ勝負を続けようぜ。折角お前の誕生日なんだ,潰れるまでは楽しく な。」


俺の盃から手を離した小十郎さんが自分の盃に残っていた分を飲み干してにやりと笑う。
誕生日,とそう言われればそうだったようなと随分酒の回った頭で思い出す。
あれ?誕生日?お前の誕生日って俺の誕生日?だからこの4人は,俺の所へ来て?
混乱する頭でそんな事を考える俺を尻目に小十郎さんは次々と酒をその体内に納めていくのだった!
















さくらの 日!

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