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BSR
小十郎×慶次(2600hitキリリク:兎様)
(あっ,居眠りしてる)

目の前の男のこんな無防備な姿を見るのは初めてかもしれなかった。
寝ている時ですら眉間に寄っている皺に思わずぷっと噴き出してしまいどんな夢見てんの,と眉間をつんつん突いてみる。
それでも起きる気配の無い小十郎にありゃ,熟睡?と首を傾げた後慶次はにたりと笑った。
叔父である利家を水風呂に入れてしまうような悪戯好きである慶次がこんなまたとない,絶好の機会を逃すはずが無い。
ただでさえ小十郎には普段から色々と(あまり詳しくは思い出したくない!)されているのだ,可愛い悪戯くらいは許されるだろうと寝る前まで使用されていたのだろう筆を手に取り顔に落書きでもしてやろうとした所でぴたりと手を止めた。
小十郎の無防備な顔を見ていたら,もっと別の事がやりたくなったのだ。


(寝てんのに恐い顔,)


まじまじと小十郎の顔を眺めて慶次はそんな事を思った。
怒れば勿論,普段からでもそれなりに恐い顔をしているのだがそれでも初めて会った時と同じように,何故か色男だなあと感じてしまう。
どちらかといえば主君である政宗の方がその表現には相応しいのかもしれないが,時折にやりと笑った時などたまらなく格好良いと思ってしまうのだ。
(って俺,何考えてんだろ!)

気が付けば鼻と鼻がひっつきそうな程の距離まで近付いてしまっていた。
何もしていないし,されていないのに,こんな風に顔を近づけるだけで,胸が苦しくなってしまう。
ああ俺はこの人に惚れてしまっているのだなあと今更な事を感じつつそっと頬に走る傷跡に唇を押しあてた。
こんなにもどきどきしているのが自分だけだと思うと妙に悔しい。
小十郎さん,と名前を呼んでもう一度口付ける。
こんな風に苦しいのが,俺だけでなくてこの人もだったら良い。
そんな事を考えていたら突然ぎゅっと手首を掴まれて,慶次は小さく悲鳴を上げて後ずさった。

「…起きたの,」
「起きてたんだ。お前が来た時から。」
「趣味悪い。」
「こんなもん持ってるお前に言われたくねぇな。」


人の顔に落書きでもしようってか,と握りっぱなしだった筆を取り上げられる。
そのつもりだったけど,とすっかり忘れていた当初の目的を思い出し惜しいことしたなあと小さく舌打ちする。
そのつもりだったけど,ともう一度繰り返し出来なかった悪戯を悔いるよりも今はこの感情をどうにかしたいと慶次は小十郎の唇に己の唇を押しあてた。
何だか別の事がしたくなったんだよ,と続ければ何だそのまま寝たふりしときゃあ良かったなと小十郎が口角を上げる。
やっぱりその表情が格好良いなあだなんて思っているとあっという間にさっきまでこっちにあったはずの主導権はあちらに移っていてされるがままになってしまう。
小十郎の唇が,舌が,手が,自分に触れていると思うとぎゅうっとまた胸が苦しくなった。


「小十郎さん,苦しい…」
「何だもう我慢できねぇのか。」
「違うよ,胸が苦しいんだ。」
「胸?」
「んっ,そう,胸…っ」
「鼓動が速いな。」


左胸の上に手が置かれるとなるほど自分でも分かる位にばくばくと強く速く心臓が脈打っている。
小十郎さんは涼しい顔をしてるのに,どうして俺だけと拗ねた気持ちになってしまう。
一緒じゃなきゃ嫌だなんて子供の様な事は言わないが,それでも自分だけ必死のようなのは嫌だった。
そんな俺の気持ちも知らずに胸の上で小十郎さんが手を動かしまわるものだから余計に苦しくなる。
止めて,と漏らした言葉を言葉通りには受け取らなかったのか小十郎さんは意地悪く笑って顔を近づけた。


「お前から誘ってきたのに,止めろだなんてひでぇ事言うじゃねぇか。」
「俺が,する分には,いいのっ。」
「我儘な奴だな。」
「だって,」


そこから先の言葉を聞いてくれる気は無いようで今まで胸の上を這っていた手が段々下半身へと下りてくる。
そうされるといよいよ余裕が無くなってきて,長い髪を左右に揺らしながら拒否をしてみるも効果は全くと言っていいほど無いようだ。
女の様に喘ぎそうになるのをこちらは必死で我慢しているのに,にやにやと笑うばかりで余裕な表情の小十郎さんが憎々しくて仕方が無かった。
人を好きになるのは初めてではないけれど,こんな風な恋愛は初めてなのだ。
だから相手ばかり慣れた風で,背伸びをしても追いつけないのだと思うと余計に癪に障る。
どうにか小十郎さんの表情も乱してやりたいのに,俺にはそれがどうしても,どうしても出来ないのだ!


「やだっ,やだってば!」
「ガキじゃねぇんだ。喚くなよ。」
「あぁ,やだってば,こんな,俺ばっか…っ」
「お前ばっかり…?」


ん?と意地悪く今度は先の言葉を促す。
この人はこういう時ばかり,(普段は聞いてくれないくせに!)俺に言わせようとするのだ。
(大抵そんな時小十郎さんが求めているのは耳を塞ぎたくなるような恥ずかしい内容ばかりなのだが何時も結局口にする羽目になる。)
俺が言いたいのは,別にそんな恥ずかしい事では無かったような気がしたのだけれど改めて聞かれると子供っぽい欲求であると感じてしまって言いかけていた口が途端に上手く動かなくなった。
どうした,言わないのか,と意地悪く言われるとますます恥ずかしくなってきて,じわりと目の端に涙がにじむ。
しばらくはそうして楽しんでいたもののこちらが続きを言わないと分かると諦めたのかまた小十郎さんの手は行為,に戻った。
やっぱり敵わないんだ,と悲しいような悔しいような感情を瞳から溢れさせながら,慶次は小十郎の胸に手を伸ばす。
(せめて何時もよりほんの少しでも良いから,この人の鼓動も早くなってればいいのに,)


「っ,え,」
「……おい,んな顔すんじゃねぇよ。」



おあいこだろうが,と初めて見せる表情でそっぽを向いた男の鼓動はまるで早鐘の様だった!
(こっちだって必死なんだよ、)





















thanks2600hit!*loch

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あきゅろす。
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