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BSR
佐助×慶次
「あれ,風来坊。」


上杉の所に前田の風来坊が居付いているだなんて愚痴をかすがから聞いて言ってみると確かにそこには居付いたという言葉がぴったりな風来坊の姿があった。
風来坊はどこに居ても最終的にはまるで最初からそこに居たかのようにその場所に馴染んでしまうのだ。
人の心を掴むのが上手いと言っても良いだろう。
(現に俺様もすっかり掴まれちゃってるだなんて言ってはやらないけれど!)


けれど俺様の目を引いたのは風来坊がすっかり上杉に馴染んでしまっているからでも無く勿論いつもの奇抜な服装でも無く,
むしろ服装の割には控えめに頭を彩っている青い花だった。
普段から華だの何だの言っているのは知っていたがまさか自分に飾る事は無いだろう。
別に可愛いだとか似合っているだとかでもそんな事をしているのは誰の為なのかとかそんな事はどうでもいいのだ。
(いやどうでも良くは無いんだけどさ。ああもうあんたそれ反則でしょ!)
ただ純粋に,そう純粋に俺は風来坊の身が心配なだけだ。
だってそんなに可愛いとか,俺様だってさっきからちょっとムラムラくらいしてしまう!


「やあ,佐助。上杉に何か用?あ,かすがちゃん?」


当の風来坊はそんな俺様の気持ちを全く知らずに(いや知ってたら困っちゃうんだけどさ!)のほほんと声を掛けてくる。
すーはー平常心平常心だって俺様忍なんだし?焦っちゃうとかみっともない!
あんたに用事とだけ告げて木の上から風来坊の横に見事着地!
(少しよろけるのはまあご愛嬌って事で気にしてはいけない)


「今度は上杉に居付いてんの?」
「居付くとか言うなよな!俺は上杉の将なの!」
「でも謙信に仕えてる訳じゃないんでしょう。何時もみたいに抜け出してふらふらしてたらいいのに。」
「ふらふら…俺そんないめーじなの?」
「いめーじ?」
「へへ!政宗に教えてもらった!格好良いだろ?」
「……伊達の旦那の言葉に格好良い〜!なんて俺様が言うと思った?」
「えー女の子なんかきゃあきゃあ言ってくれるんだけどなあ。」
「物珍しいからじゃないの?」
「ひっど!」


ぶつぶつ言う風来坊の頭にそっと手を伸ばす。
触れた花弁は頼りなく揺れて,けれどそれすら美しさに変えて,なるほど彼を華だと最初に言ったのが誰かは知らないがそれは言い得て妙だという事になるだろう。
(俺様で無いのがちょっと悔しいけれど!)
けれど青い花だなんて俺様は嫌いだ。
さっきの変な言葉を使う誰かさんや,上杉を連想させる花だなんて,



「格好良さとか気にする割にはこういうの付けちゃってるんだね。」
「あ,これ,似合うだろ?確かに格好良くは無いんだけどさ,」
「簪でも挿しときゃいいのに。花のやつ。」
「簪も悪くないんだけどね,やっぱさあ,生きてる花が一番綺麗だよ。」
「どっちも似合わないんだから,変わらないと思うけどね。」
「……佐助俺に何か恨みでもあんの?蕎麦?」
「蕎麦よりは殴られた方を気にしてるけど。」



ごめんってばとその大きな手を合わせて懸命に謝ってくる姿までが愛しいだなんてどうかしてる!
頬が赤くなってないかとふいと顔を逸らして手をやり確かめる。(大丈夫だ,熱く無い!)
佐助佐助と連呼する風来坊をはいはいとあしらって(止めてよこっちも必死なんだから!)彷徨わせた視線の先,
一瞬だけぴたりと動きを止めるとすっとその場所に移動して,一輪の花を摘んだ。





「風来坊なんて,この花くらいがお似合いだよ。」





頭で揺れる青い花を投げ捨てて,ほんのり赤く色づいたその花を代わりに挿してやった!
(素直になれない俺様の精一杯の,)





















緑の花とかあればいいのに。
あるのかな?

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