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ideology
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そういえば、人間は一生の内に幻覚を一度は見るらしいし。
時々テレビで言っている小人のおじさんを見た、とかと同じ。
でもそれは、幻覚と言うよりも錯覚に近いかもしれない。

これは俺の勝手な予測だが、昔に見た映像が脳の錯覚もしくは処理の失敗で今見ている映像とリンクして幻覚または錯覚が見えてしまうのではないか。
つまり、幽霊をみたとかは人間の心理的な要因から来る錯覚で、暗い所を歩いてれば人は自然と恐怖感を覚え何でもないモノが人影に見えてしまう。そんなところだ。

たった一瞬の出来事に乱れてしまった心を落ち着かせるためにこんなにも考えるなんて…
学校の授業より考えたかもしれない。
気を紛らわそうと車内上部の広告を見つめながら静かに深呼吸をし目を閉じる。
先程のキャパシティを超えるような仮説で酷使した脳内を、肺に取り込まれた新鮮な空気が血管に入り熱くなった所を冷やしてくれた気がした。

息を吐きながら目を開ければ、やっと落ち着けた。いつもの電車だ…。
電車で通学しているものの、そんなに距離が遠いわけではない。
自転車通学も可能な範囲だ。寧ろ、男子生徒は自転車通学が普通で。
でも、俺は朝から運動できるほどタフじゃないし、親からも定期代を渡されるからそれを断る理由もないし
ボーっと外を眺めていたらいつの間にか降りる一駅前。
床に置いてあったカバンを膝の上に乗せて降りる準備をする。
車掌さんの、あの独特な喋り声のアナウンスの後に扉が開く。
扉が開く瞬間は何かあったらどうしようと緊張したが、杞憂に終わった。
いつも利用する改札口から階段を上って外へ出れば、少し離れた所に見慣れた人影。

「待ちくたびれた。もっと早く来いよなぁ」
「電車なんだから決まった時間しか来ないだろ」

愚痴りながらも、俺のカバンを前カゴに入れて早く後ろに乗れと無言の要求。
それに急かされて俺は後ろに座った。

[*Before]

あきゅろす。
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