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ideology
1

それが世界の全てだった
目の前にある世界が
自分にとっての
世界の全てだった。
そして、
そこに在るものが
普通であり基準だと
そう思っていた。
それ以外に
基準や世界が
あるなんて思っていなかった。
──あの時まで

目を覚ますといつもと変わらない白い天井が広がっていて、いつもと同じように起きたばかりで上手く動かせない身体をベッドから起こす。
何も変わらない。唯一違うといえば降り続いていた雨が上がっていた、ということだ
この白い部屋と部屋の窓から見える世界が自分にとっての世界の全てだと理解していたつもりだった。

──嗚呼、またあの夢だ。
色のついた夢。
一瞬、現実と混同する夢。
繰り返し繰り返し見る夢。
単調で無機質な夢。
何故、このような夢を見るのかは分からない。
夢なのだが何故か現実味を帯びていて、それに状況等も記憶しているかのように理解出来た。
そして、いつも目を覚ますところから始まり、暫くして夢から覚める。
「暫く」という時間は本当にまちまちで、部屋の中を歩いたり出来たり、はたまたベッドから身体を起こす前に覚めたりもするこんな夢を週に1、2回。
昼寝や授業中の居眠りにも見たりする。

一番恐ろしいのは、時々どちらが現実か区別がつかなくなることで……

止まらぬ思考の輪廻。
なんて言ったらカッコいいだろうか?
…バカバカしい。

でも、実際夢の事が頭から離れない俺はそれを振り払うように枕元に置かれている自分の携帯に手を伸ばし開いた。

不在着信とメールが数件。
おそらく、不在着信もメールもアイツ――怜汰からだろうそんな事を考えていたら掌の中の携帯が震えた。液晶ディスプレイには先ほど脳内で思い浮かべていた名前が映っていた。どうせ大したことじゃないだろうと思いつつ携帯を耳に当てた。

『おはよー。倬也。今起きた?』
「あぁ……」

機械を通した電子的な、でも聞き慣れた声。その音声の後ろでは大勢の声とチャイムの音。部屋の時計に目をやると12時45分過ぎ。昼休みか…そんなことを考えていると、能天気なテンションの高い声が耳元で響く。

『今日の放課後って暇?』
「別に…用事は無いけど」
『じゃあさ遊ばね?』

行く、と返事をしようか迷っていると電話の向こうで怜汰以外の声がした、小さくて良く聞こえないがどうやら遊びの誘いらしい。“今行くから待ってろー"と言う声が耳に響いた。馬鹿が携帯を離さずに大声で叫んだせいで耳が痛い。

『じゃあ、詳しい話は後でな。絶対学校来いよ!!』

プツンと一方的に切られ、勢いに唖然としながら携帯を閉じた。

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あきゅろす。
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