御揃いの待受。(山崎)
「山崎くん、まだ委員会かなぁ…」
時計とにらめっこしながら、溜め息混じりに呟いた。
山崎くんと帰りたい。
山崎くんと、帰りたい。
特に用事がない限りは一緒に帰るって、そう約束したのは付き合い始めた頃。と、言ってもそれは1ヶ月前だったりするんだけど。
「今日は委員会があるから先に帰って良いよ」
そう言われたのに、ひとりで勝手に3Zの山崎くんの席に座って待ってる。(自分の教室は委員会で使われてるから)
「うん、わかった」って返事をしたから、来てくれるかなんて本当はわからないんだけど。
身体を机に預けて、右手に握ったスライド式携帯の待受を見て少し顔が緩む。そこに写ってるのは、山崎くんの寝顔。
うちのクラスのHRが長くなってしまった日に、急いで3Zに行ったら山崎くんが小さな寝息を立てて寝ていたのだった。
睫毛長いなー…、なんて思いながらカバンから携帯を取り出してすかさず写メらせて貰ったものがコレだったりする。
すぐさま待受にして、山崎くんに恥ずかしがられたのは言うまでもない。
***
あれからどれくらいの時間が経ったんだろう。
いつの間にか寝てしまっていたみたいで、教室を照らす太陽が赤く染まっていた。
教室の前黒板の上にある時計を見て時間を確認すると、それに見合う時間になっていた。
「山崎くん、さすがに帰っちゃったかなー…」
誰に言うでもなくぽつりと呟いたら、返ってくるはずのない返事が返ってきた。
「誰かさんが寝てたから、まだ帰ってなんかないよ」
声はすぐそこ、後ろから聞こえてきた。
よく知ってる、私の大好きな声。
振り向けば、その人物がそこにいて、後ろの席に座って頬杖をついていた。
「山崎くん?あれ、なんでいるの?」
「委員会が終わって、帰ろうと思って下駄箱行ったら苗字さんの靴がまだあるし、もしかしてと思って戻ってきたんだよ。そしたら案の定、寝てるし」
ため息交じりに「帰って良いよって言った時『わかった』って言ったから帰ったと思ってたのに」と口にして呆れた顔をしていた。
「だって、やっぱり山崎くんと帰りたかったから」
山崎くんの顔が、少し赤く染まっていった。夕日の明かりのせいもあるかもしれないけど。
「気持ちはすごくうれしいけど、待つなら待つってちゃんと言ってくれないと。今日は気付いたから良かったけど、気付かずに帰っちゃうかもしれないじゃん」
「ごめん、なさい」
「怒ってないし、次からちゃんと言ってくれれば良いから、ね?」
頭をぽんぽん、と撫でられて、わかった、と返事をする代わりに小さく頷いた。
「それじゃ、もう暗くなってくるから帰ろっか?」
そう言って差し出された山崎くんの右手を取って、片方の手でカバンを手にして夕日で真っ赤に染まる教室を後にした。
***
「あ、そういえば」
学校の近くにあるコンビニに寄って買ったアイスを食べていたら、ソフトクリームを頬に付けた山崎くんがハッとした顔で私を見た。
「どうかした?」
「苗字さん寝てたから、前のお返しで写メ撮らせてもらったからね」
にっこりと笑顔でそう言う山崎くんはソフトクリームを持つ反対の手で携帯画面を見せてくれた。
そこには、先程教室でぐっすりと眠っていた私の顔があった。
「ちょ、待ちうけにしないでっていうか、削除!!」
「えー?苗字さんだって待受、俺なんだからお互い様でしょ?」
そう言われると何も反論出来なくて、ただ「そうだね…!」としか返事が出来なかった。
御揃いの待受。
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山崎大好き!
銀魂で一番好きですね、彼。
なんていうかもう、苗字呼びに初々しさを感じてしまうのは私だけ?
(2008/08/26)
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