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いつでも近くにいるよ(亮介)



「行かないでよ、」


そう言って亮介さんは私の腕を掴んで引き止めた。
亮介さんの声は弱々しくて、そんな亮介さんの声を聞いたことがなかった私は、戸惑ってしまった。戸惑ってしまったから、次の言葉を紡ぐのに少しの時間が掛かってしまった。
早く何か良い言葉を掛けなきゃ、と焦る気持ちが言葉を紡ぐ邪魔をしていた。
こんな亮介さんを、私は知らないから、焦って、戸惑って、困惑した。

亮介さんは、私の腕を強く引っ張って私を抱き寄せた。後ろから亮介さんの手が伸びてきて、その腕が私の首に回される。そして、壊れたものを扱うかのように抱きしめられる。


「え、と、亮介さん…?どうしたんです、か…?」


戸惑いながらも、やっとの思いで出てきた言葉はありきたりな言葉だった。
そんな言葉時間を掛けなくたって出てくるのに。普段なら、もっと早くこんな言葉は言えるのに、なんでこんな言葉しか出ないんだろう。
いくら考えても、もっと良い、他の言葉は私の辞書から引っ張り出すことはできなかった。
今の私には、そんなありきたりな言葉しか言えない。頭が追いつかない。どうしたらいいのかも分からない。


「あの…亮介さん…?」
「お願い…少しの間、こうさせて…」


その声は、さっきよりも弱々しくて、か細くて、今にも折れそうな声だった。
亮介さんの言葉に、私はただ頷いただけで、何も言えなかった。どうしたらいいのか、全然分からなくて。何も言えずにいた。
どうしようか、と考えていたら先に口を開けたのは亮介さんだった。


「不安なんだ…名前 がいなくなっちゃうんじゃないか、って。いつか離れてくんじゃないか、って…」
「私は、離れませんよ?亮介さんは一番大切で、大好きです。だから、絶対に離れませんし、いなくなりませんよ」


考えるより先に言葉が出た。口が動いた。自分のその言葉は本当で、嘘偽りは無い。


「なにがあったかは知りませんけど、亮介さんから離れることはないですよ。距離的には離れることはあるかもしれません。だけど、心の距離的には絶対に離れませんから」


自分にも、亮介さんにも、どちらにも言い聞かせるように言った。ゆっくりと、しっかり聞こえるように。


「だから、亮介さん。安心して下さい」


今はこんな言葉しか言えないけど、今の自分には精一杯の言葉だ。


「うん…ありがとう、 名前 。お願いだから絶対に、離れないでよ?」


声が、普段の亮介さんの声に戻ってた。
弱々しくない、か細くもない、折れそうでもない、亮介さんの声だった。しっかりとした、強い声だった。


「分かってますよ、離れません。亮介さんこそ、私を放さないでくださいよ?」
「離すわけ、ないでしょ?」


自信たっぷりな亮介さんの言葉に、そうですよね、と笑ってみせた。
首にかかった亮介さんの髪が、くすぐったかった。



いつでも近くにいるよ
(だって貴方が一番大切だから。)

いつでも近くにいるよ



(だって貴方が一番大切だから。)


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タイトルは、リライト様からお借りしました。

アリエッタのりゅーちゃんにメールで送った夢小説の書き直したものです。
りゅーちゃんに捧げます。
前サイトでの物。読み返して改めて、これ亮介さん?と思いました。


(2007/10/01)


あきゅろす。
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