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授業中指されて戸惑っていたら助けてくれた(亮介)


1時間目の授業開始を合図する号令をしてすぐ、先生は自分のチョークケースから白のチョークを一本取り出し、黒板へとチョークを走らせた。
先生の綺麗な字が黒板を埋めて行くカッカッという音がよく響く。

それから少したって先生は黒板に書きたかったことを書き終えたようで、チョークを開けっ放しにしてあったチョークケースに戻し、音を立てて手についたチョークの粉を払った。


「昨日の授業はちょっと難しかったので、今から復習をします」


周囲がちょっとしたヤジを飛ばす中、昨日は家の用事で学校を休んだから有り難いと思った。
昨日の授業のノートを友達に借りて写す気でいたけれど、この授業のノートは借りずに済んで友達にも荷がかからなさそうかな、なんて思っていた時に先生の声が私に向けられた。


「それじゃ、ここは…苗字さん!」
「あ、はい!」
「昨日やったところだから答えれるよね?」


いやいや先生!私昨日いませんでしたから!!
…だなんてこと、自他共に自己主張が弱いと認める自分には言えず、名前を呼ばれて反射的に立ってしまった。


「どうしたの、苗字さん?わからない?」
「あ、えーと、その…」
「あ、もしかして、昨日の授業は寝てたとかかしら?」


寝てた以前にいませんでした!
私ってそんなに存在薄いですか、先生…。濃い方ではないことは自覚してたけど、そこまで薄いとは思ってませんでしたよ…。そう考えたらちょっと泣きたくなった。


「すみません、先生」


どうしよう、とうろたえていたらふいに先生を呼ぶ声が耳に入った。その声はとても近くから飛んできた。
声の主は、隣の席の小湊くんだった。


「どうしたの、小湊くん?」
「先生、苗字さんは昨日お休みしてたのでわからないと思うんですけど」


机に片肘を付いて頬杖を付きながら、綺麗な通る声ではっきりと小湊くんがそう口にした。
私の言いたかったことを、いとも簡単に口にしてくれた。


「あらやだ!そうだったわね!ごめんなさいね、苗字さん」
「いえ…私もすみません」


先生に頭下げられ、私もそれに習うようにぺこりと頭を下げた。


「ふふ、苗字さんは謝らなくてもいいのよ。ほら、席に着いて着いて!」
「あ、はい」


そう言われて椅子に腰を下ろす。ホッとして、ふぅ、と溜息を吐いた。
それから小声で小湊くんに「ありがとう」と口にした。


「ああ、別に気にしなくて良いよ」


笑顔でにっこりと、そう返された。
それはいつもの笑顔とはどこか違って、とてもかっこよくて、思わず息を呑んでしまうほどだった。
小さく、息を吐くように「わぁ」と声を漏らしてしまった。自分にしか聞こえない、とても小さな声だった。


「苗字さん?どうかした?」
「あ、ううん、なんでもないよ!本当にありがとうね」


そう言って小湊くんの方を向いていた上半身を黒板に戻して、机に少し身を預けた。

多分今、顔赤いかもしれない。そう思って両手で頬を挟んだら熱かった。
小湊くんのあんな笑顔はふい打ちだと思った。
普段からとてもにこやかでかっこいいし、優しいなって思ってたけど、好きとかそんな感情持ってなかった。
だけど、私にはあの笑顔を見てそういう感情を抱かずにはいられなかった。だって、すごくかっこよくて綺麗だったのだから。あの笑顔は絶対反則。

少しだけ、ちらりと小湊君に目を向けるとこちらに気付いたらしく、ニコッと笑顔をこちらに向けられた。
普段の笑顔だったけど、好きだなって意識したらそれだけでも恥ずかしくなった。



LOVE STRUCK
授業中指されて戸惑っていたら助けてくれた

そんな貴方に恋をした!





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PCサイトの5000HITフリーLOVE STRUCK第一弾として置いておきます。

元の案が長かったので削ってすっきりさせました。
(タイトルお借りしました:確かに恋だった)




(2008/03/20)


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