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愛してくれないのなら、いっそのこと、(栄口)



貴方が他の人のものになんてならなければ良かったの。私以外の者を愛せないようになってしまえば良かったの。貴方が私を愛していたのは今は昔のお話だと、皆が口を揃えて謂うわ。そんなこと信じたくない。貴方がもう私を愛していなくたってね、私はまだ貴方を愛しているのよ。私だけ愛してるだなんて不公平だわ。ねぇもう一度笑いかけてよ。私だけにその笑顔を向けてよ。あの子じゃなくて、私にその笑顔を向けてよ。それは無理だよだなんて謂わないでよ。愛していると肯定してよ。否定なんてしないでよ。


私以外の人が貴方に触れないようにどこかに閉じ込めてしまえば良かった?手枷足枷をして拘束してしまえば良かった?そんなことしたって隣に居てはくれないでしょう?どうしたら離れていかなかったの?どうしたら私の隣に居てくれたの?どうされたって居てあげられないよ、だなんて謂わないでよ。


手に入らないのならば、隣に居てくれないのならば、いっそのこと貴方を、       。




「ねぇ、勇人」
「なに?」
「愛してると謂って笑ってよ」
「ごめん名前 。それは出来ないかな」




そんな言葉も、苦笑いも、私は求めてなんていないわ。愛してると謂って笑ってくれればいいの。それだけで済むことなの。早くあの子と縁を切ってよ。どうしてあの子のもとへ行くの。私のところにずっといてよ。ずっと隣にいてくれると謂ってよ。

謂ってくれないのなら、愛してくれないのなら、いっそのこと、殺してしまおうか。そして、私も死のうか。貴方と一緒に。そうすればずっと一緒にいられるかもしれないわ。一緒にいられなくても、貴方はもう誰のものでもなくなるのなら、それでいいわ。






貴方の首を絞めて、殺して差し上げましょう。






貴方が愛してくれないから悪いのよ。愛してさえくれたのならば殺すだなんてことしなかったもの。貴方が悪いの、ずっと愛してくれなかったから。あの子のところに行ってしまったから。私の隣に居てくれたのなら、殺すだなんてことはしなかったのよ。愛していると謂ってくれればよかったの。隣にいてくれればよかったの。ただそれだけよ、私が望んだことは。








皮肉にも、死ぬ間際に貴方が呟いた言葉は、私の名前だった。


愛してくれないのなら、いっそのこと、
ねぇ、勇人。如何して最後に私の名前を呟いたの?





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最後に名前を呟いた理由は栄口くん以外、誰もしらない、わからないのです。

(2007/10/01)


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