それはそれは麗らかな午後、というのは時間軸がほぼないような世界では些か適切な表現ではないが、
本来ならば学生であるアリスはお弁当を食べ終え、心地よい満腹感により襲い来る眠気と格闘している時間に、アリスとチェシャ猫は、不思議の国の木陰でのんびりと横になっていた。
時折、アリスは何の気なしに不思議の国に行っては、一日中不思議の国の住人とのんびり過ごす。
大概、夜になると帰るが、不思議の国には先も言ったように時間軸がないので、いつもチェシャ猫がアリスに現実世界の時間を知らせるのだ。
アリスがそれを望む限り、猫は時間を知らせないこともなければ、嘘の時間を言うこともない。
だからこそアリスは安心して、ただただ自分の作り出した世界に浸ることができた。
今日のアリスは、チェシャ猫と共に世界の一角である草原に寝転がっている。
温かい風が微かに吹いて、アリスの髪を揺らした。
「んー…気持ちいいね…」
「そうだね」
アリスがそう言えば、チェシャ猫は無条件で同意する。
「…寝ちゃいそうだねえ…」
「そうだね」
猫がまた同意したので、アリスがからかうように笑った。
「ふふ、猫ったら。ちっとも眠くないくせに…」
言ってから、アリスがまた笑うと、チェシャ猫もいつも通り笑った。
「アリスが望むなら、眠るよ」
チェシャ猫の言葉に、閉じられていたアリスの目が勢いよく開く。
その勢いのままアリスは体を起こし、信じられないものを見るように、傍らに横たわるチェシャ猫を見た。
「…チェシャ、猫」
「何だい、僕らのアリス」
呼べば、チェシャ猫はいつも通り笑った口元のみを見せる。
そこからは何の真意も読み取れない。
「その笑顔も、私が望むからなの?」
「僕がアリスを愛してるからだよ」
「…その言葉も、私が望むからなのね?」
「僕がアリスを愛してるからだよ」
僕だけじゃないよ
みんなみんな君を愛してるんだ。
ねぇ、それなのに
僕らのアリス
「どうして泣くんだい?」
泣かないで。
そうチェシャ猫が笑うと
アリスは涙目で笑った。
「私のチェシャ猫、あなたが望むなら」
プログラム
あなたがわたしをあいするという 義務
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