作文(キリ番4100:御飴様 リク:猫アリ甘ギャク) とある、極々平凡に終わるはずだった日。 帽子屋は苛立っていた。 それは決して、先程煎れた紅茶が不味い訳でも、いつも茶会に参加する寝ぼけた鼠の所為でもない。 否、参加者という点では間違いではなかった。 そう、今日の茶会はいつもとは違い、 「チェシャ猫、紅茶飲まないの?もったいないわよ?」 「猫舌だからね。アリスが冷ましてくれるなら飲むよ」 「……もう、しょうがないなぁ」 帽子屋たちの存在を一切無視してイチャつく、チェシャ猫とアリスが来ているのだ。 帽子屋がポットを温めているところにふらりとやって来てからずっと、帽子屋の目の前でベタベタベタベタしている。 ネムリンは、アリスが来た時こそ起きたものの、チェシャ猫と会話を始めたあたりで意識を手放したようだ。 暫くは我慢して、静かに紅茶を飲んでいた帽子屋だったが、いい加減馬鹿らしくなって叫ぶ。 「っだー!!何っなんだよお前らぁあ!何しに来たんだ!嫌がらせか!!」 わざわざ茶会に来てまでイチャつくんじゃねーよ!と机を叩けば、アリスは思い出したように数枚の紙とシャープペンシルを取り出した。 「そうそう、宿題が出たの!すごく難しいから、帽子屋たちにも協力してもらえないかなって」 我らがアリスは可愛らしく小首を傾げて、お茶会の邪魔してごめんね?と眉尻を下げる。 「アリスが邪魔なはずないだろう」 「お前は邪魔だけどな、猫。…で?宿題って何だよ」 アリスが自分に二次関数や図形を聞いてくるはずもない。ならば何だろうかと帽子屋はアリスの持っている紙を覗き込んだ。 「………“私のすきなひと”ぉ?」 帽子屋の声に不機嫌が滲み出る。 「うん、作文。 好きな人について書くのよ」 「チェシャ猫でいいじゃないか」 至極分かりきったことを告げてやれば、アリスは軽く首を振った。 「ううん、駄目なの。…確かにチェシャ猫は大好きだけど、…人じゃないんだもの…!」 「アリス、君が望むなら、僕は人になるよ」 「チェシャ猫…!でも私はそのままのあなたが好きなのよ!」 「アリス…!」 「チェシャねk「お前らいいから早く帰れ」 半ばヤケクソになって叫べば、チェシャ猫が多少むっとしたように言う。 「うるさいよ帽子屋。アリスが困ってるんだ、早く何とかしなよ」 「え、何で俺が怒られてんの!?」 理不尽な怒りをぶつけられた帽子屋は、投げやりに「おっさんでいいじゃん」と言った。 「何かオカアサンの弟?いたじゃないか。今あいつの家にいるんだろ?」 「えー、でも…」 「ちょっと帽子屋、勝手なこと言わないでくれるかい。アリスの好きな相手は僕だよ」 「チェシャ猫…!」 「アリス…!」 「もうチェシャ猫でいいじゃないか!最初から聞くなよ!!」 はいもう決定!宿題終わり!! パンパンと手を鳴らして言ったものの、アリスは不服そうに抗議する。 「でも提出するのよ?何て説明するの?」 それはそうだ。 『私の好きなひとは人ではなく猫です!歪みの国に住んでいて、首だけになっても死にません!』なんて生徒が作文に書いたら、先生はまず間違いなく精神病院を勧めるだろう。 「そうだよ帽子屋。本当にイカレてるね」 「お前にだけは言われたくない。 じゃ、あいつは?確か武むr「却下」 「でも、あとは武「駄目」 「だって、た「絶対駄目」 「……「有り得ない」 珍しく大きな声を出したチェシャ猫に引きつつ、アリスをちらりと見れば「あーチェシャ猫武村さん嫌いだもんねー」と微笑んで紅茶を飲んでいる。 アリスじゃなかったらポットを投げるくらいはしただろう、とぼんやり思いながら帽子屋は作文用紙につらつらと文字を綴った。 作文 なんて ただの口実! (好きなひとはいませんー? これ有りなのかなぁ) (いいんじゃない?僕以外を好きなんて嘘書くよりずっと) (チェシャ猫…!) (アリス…!) (宿題終わったんだから帰れ――!!) 以下、あとがき キリ番4100を踏んで下さった 御飴様に捧げます!! 帽子屋友情出演…← みんな偽者ですね! とにかく猫とアリスは周りを気にせずイチャついてればいいと思…ごめんなさい! 凛音様に限りフリーです。 |