幻想は常に(キリ番555:なっつん様 リク:猫アリ) 「ちぇしゃ猫、あなたはどうしていつも笑ってるの?」 幼いアリスは長い髪を揺らして、自らが乗っている灰色の三日月を見やる。 草原に仰向けに寝転がっている灰色が少し動くと、その上に寝ているアリスも合わせて揺れた。 それが気に入ったのか、アリスは笑って灰色の上で跳ねる。 灰色がいささか苦しそうな息を漏らしつつ、腕を伸ばして 跳ねるアリスを抱きしめた。 「…それはね、アリス」 灰色は、より一層笑みを深める。 「この世界は、夢だからさ」 灰色がアリスにそう言うと、アリスは暫くきょとんとしていたが 「…ゆめぇ?」 怪訝そうに首を傾げた。 「アリスがすきだからじゃないの?」 拗ねたように言うと、灰色はまた笑う。 「勿論。僕らは君を愛してる」 「嘘ばっかり!」 アリスはその顔をひどく歪めて、今にも泣き出しそうに叫んだ。 「嘘よ、そんなの嘘!みんなみんなアリスが嫌いなんでしょう!だからみんなアリスと一緒にいてくれないんだわ!」 とうとう泣き出したアリスの髪を、灰色が撫でる。 「…僕らのアリス、君が望んだんだよ」 「望んでないわ。アリスはそんなの望んでない」 アリスは灰色のローブを強く掴んで、灰色の瞳があるだろう部分を睨んだ。 灰色はさらに笑みを深めてその視線を受け入れる。 「アリス、アリス、僕らのアリス」 涙で視界が歪むように、否、それは決して比喩ではないのだけれど――― 「ちぇしゃ猫、ちぇしゃ猫?」 ゆっくりと、しかし確実に 精一杯掴んでいたはずのローブの感覚が無くなっていく。 「君が望んだんだ、この夢の終わりを」 優しく髪を撫でる灰色は、やはり笑っていた。 「もう夢に戻ってはいけないよ。君の世界は此処じゃない」 「嫌、嫌よ、消えないで!」 もう灰色と世界の区別がつかなくなった視界の真ん中で、その三日月だけはやけにはっきりしていた。 「―――亜莉子」 びくり、と亜莉子の肩が揺れる。 「僕らは消える。夢は終わりだよ。もうお戻り」 「やだ、消えないで」 戻りたくないよ、此処にいたいよ 「ねぇ、“お願い”!!」 アリスが叫ぶと、歪んだ視界を闇が飲みこんだ。 「―――僕らのアリス、君が望むなら」 闇の奥で、灰色が笑った。 幻想は常に 甘美 (そして少女は) (目覚めを放棄する) 以下、あとがき キリ番555を踏んで下さった なっつん様に捧げます!! 子アリスが可愛くなくてごめんなさい…!; なっつん様に限りフリーです。 |