dust
たあ
ふと気づくと、そこは暗闇だった。
はて私の目はいつから開かなくなったのか。
否、記憶違いでなければ、両目が使えなくなったことはないはずだ。
『ねえ、かみさま』
首を傾げていると、愛しい愛しい少女の声が降ってきた。
応えようとする前に、少女が手をこちらに伸ばしたのを感じる。
この両目は何故見えないのだろう。
少女は笑っているのだろうか、それとも泣いているのだろうか。
『あなたをかばって、ぼくはしぬ』
『あなたがいたから、ぼくはしぬんだ』
次に感じたのは頬にぬるりとした感触。
まだ生暖かいそれは、おそらく先刻まで少女の中を巡っていたもので
『たとえあなたがねむってしまっても』
『ぼくはあなたをうらみつづける』
少女の弟だった人間が刺した剣の切っ先によって体外へ流れ出た赤だった。
『ぼくは、ぼくだけは』
『ずっとおぼえているから』
頬に添えられた手から力が抜ける。
少女が間際に呟いた言葉は、
不眠症の
神様は
愛しい少女の
夢をみる。
少女だけが知っていた、私の本当の名前だった。
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