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dust
戯れ、
俺には大嫌いな人間が何人もいるけど、その中でも一番嫌いな人間が今、俺の前で泣いてる。

「貴男を、お慕いしております」

金持ちの嬢ちゃんであるそいつは、よく手入れされたブロンドの長い髪を揺らしながら嗚咽を漏らして
世間知らずならではの濁ってねぇ瞳で俺を見た。

「どうか私を連れ出して下さいませんか」

もう嫌なんです、こんな生活は。

嬢ちゃんはそう言って泣く。
…そんなん、しがない花屋の三男に頼むことか?
俺が微かに笑うとお嬢ちゃんは期待したような目で俺を見上げた。


自分の願いが全て叶えられることを知ってる目。
全ての人間は善人で、自分の家と等しく金持ちだと思ってる目。


泣けば済むと思ってるってか。いや、事実そうだったんだろうよ。

いっそ連れ出して、スラム街にでも捨ててやりてぇな。それより人売りにでも売るか?
どうしてそんなに俺を信用してんだか知らねぇけど、こいつを見てると吐き気がする。

俺は答えるべくそっと目を伏せて、言った。


戯れを、
御嬢様。

俺達に共通点なんてない。


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