JUSTICE And PIRATES
見習い卒業
『あ、カクさんだ』
向かい側にカクの姿を見つけた名無しは、反射的に手を離そうとした。…が、ルッチはそれをさせず、逆に強く握り直される。
「名無し…!寝たんじゃなかったのか…?」
名無しとルッチを前に、カクは足を止めた。
『カクさん、今から任務ですか?』
「あぁ…。
…名無し、何持っているんじゃ?」
名無しが大事そうに抱えていたのは、可愛らしいイラストが書かれた四角い缶。
任務先で、ルッチが名無しにと買って来たやつだ。
『ルッチに貰った〜♪』
嬉しそうに言った名無しの頬は、ほんのりと赤くなっていた。
因みに、名無し本人に自覚はない。
「……………。
そ、そりゃ良かったのぅ…。」
何とも言えないような表情をしたカクは、急ぐようにして任務に出発していった…。
─────
任務先へと向かう船の一室―
「…はぁーーーー。」
カクは、盛大な溜め息を吐いた。
頭にあるのは、ルッチと名無しの事…。
手を繋いで現れたり、名無しに土産を渡したり…そして、名無しの表情…。
考えれば考える程、カクの胸は苦しくなっていた。
「…ワシの入り込む隙は、無いみたいじゃのぅ……。」
切なげな笑みを浮かべたカクは、気持ちを切り替え任務の資料に目を通し始めた。
その頃、名無しの部屋では―
『…………。』
壁を背にして座り込んだ名無しは、四角い缶とまだ感触の残っている左手を同時に見ている。
『……この1ヶ月、長かった…。』
ポツリと呟いた名無しの心は、空いていた穴が埋まっていくような、不思議な感じがしていた。
『…寝る前に、中を見てみよう…』
ルッチに貰った四角い缶の蓋を開けると、中には色とりどりの飴がびっしりと入っていた。
─────
『指銃を飛ばすやつと、連続でするやつ…教えて?』
「お前には、まだ早い」
『えー!』
オフ日を1日挟み、その次の日からルッチとの特訓が再開していき、夜はルッチの部屋で勉強…と、何時もの光景が戻ってきていた。
そして数ヶ月が経ち―
「えー、今日で見習いの全過程を終了する!」
見習いを卒業した名無しは、晴れてCP9の正式なメンバーとなった。
その事を真っ先に報告した相手は、勿論ルッチ。
「やっと卒業か…。おめでとう」
『ありがとう!ルッチのお陰だよ!』
「…オレは何もしてねぇぞ」
『そんな事ない…!』
名無しは、特訓に付き合ってくれた事を含め、色々と世話になったルッチに改めてお礼を言った。
「…礼には及ばん。」
ガチャ!
「おう名無し、正式なメンバーになったんだってな!!」
ノックもせずに、部屋に入って来たのはジャブラだ。
「うるせーのが来た…。…用がないなら、早く自分の部屋に「黙れ化け猫!」
「黙るのはお前だ、野良犬!」
「あァ?!誰が野良犬だ!!(怒)」
化け猫と野良犬が、また口ゲンカをし出した。
『…………ι』
また始まったと思いながら、名無しは先程の訓示の内容を思い出していた。
「一度しか言わないからよく聞け!!お前がCP9に入った以上、如何なる理由があろうとも、決して抜ける事は出来ない!
もし、そのような事があったら……分かるな?」
『…………。』
今更ながら、とんでもない組織に入ってしまったんじゃ…と思った名無し。
だが、不思議と不安はなかった。
『ふっ……。』
名無しは、ジャブラに絡まれているルッチを見ながら、口元を緩めたのだった…。
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