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友情から脱線
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 最近、長谷と俺の関係が無駄にギクシャクしている。

 たぶん、というか間違いなく、一週間前にやった新入生歓迎会、周りからの無茶ブリに流されて、やらざるをえなくなってしまった“ちゅう”が原因だと思う。
某お笑い芸人の真似事だ。
新入生にいきなりなんつーものを見せる気なんだと思っていたら、新入生共はドン引きするどころか爆笑しまくりやがって、写メ撮るからもう一回って。
先輩をなんだと思ってるんだ。

長谷も長谷だ。
やる前はべろんべろんに酔っ払っていたのに、やる瞬間いきなり正気に戻ってカチンコチン。
思い切りギュッと目を瞑るもんだから、俺はもう頑張るしかなくなった。
おかげで今じゃ長谷と顔を合わせる度にあの時のことを思い出して自己嫌悪する毎日だ。
長谷もなんだかぎこちない。
長谷とは高校からの付き合いで結構長いんだが、まさかあいつの唇の柔らかさを物理的に知ることになろうとは、夢にも思わなかった。



「大木って、今彼女いないんだっけ?」

 大学の講義が終わって、長谷達とどこで昼飯をとろうか教室で話していると、不意に声をかけられた。
振り返れば、サークルの飲み仲間であるエリカが、ワクワクした面持ちで俺の顔を覗き込んでいた。

「まぁ、いないけど」

いきなりの質問に不思議に思いながらも答えると、エリカは小さく飛び跳ねてガッツポーズをとった。
気になるのか、長谷達が後ろから覗き見てくる。

「よーし! あのねあのね、今日合コンあるんだけど、男子一人減っちゃってさ。代わりっちゃなんだけど、どう? 暇だったら来ない?」

「あー……」

今日はバイトも入ってないしなー、なんて思案していると、突然腕を掴まれた。

「大木! ちょっ、こっち来て!」

長谷が慌てた様子で俺の腕を引いていた。
よっぽどの緊急事態なんだな、と直ぐに判断が着くくらいの焦りっぷりだ。
エリカがキョトンとしている。

「なんだよ。なにそんな急いでんだ」

「え!? いや、とにかくヤバいんだって! エリカ、悪いけどまた今度な」

エリカが雰囲気に飲まれた感じで頷くのを見届けると、長谷は駆け出した。

「は? おい!?」

驚いている間に腕をぐいぐい引っ張られて、無理矢理走らされた。
教室を抜け出し、5号館を駆け去り、中庭を駆け抜け、文化部の部室棟裏で唐突に止まった。
いきなり止まった長谷に、案の定俺は反応出来ず、思いっきり鼻を長谷の後頭部にぶつけた。

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