秘密コウサク
2
が、それも束の間。幹人さんからのメールを思い出して、すぐにオレの口元はだらしなく緩む。
「へへへへ〜」
「キモい! その顔でオッサンみたいな笑い方するな! なんなんだよお前どMか!?」
「どM? あーどうだろう。あはは、うん。オレどMかも」
最近になって気づいたのだが、幹人さんはちょっとSが入っている。
それは夏休み前の放課後、2人でボウリングへ行ったときに発覚した。
ストライクを出したオレは、ついうっかり女子にあるまじき声で「よっしゃあキッタアアア!」と拳を握ってしまったのだ。
周囲の視線を独り占めにし、幹人さんをポカンとさせたオレは、真っ赤になってしゃがみこんだ。
数秒後、幹人さんは茹で蛸になったオレを見て吹き出した。
そしてごめん、可愛かったからと弁解し、クスクス笑いながらこうのたまったのだ。
『今の、僕の前でもう一回言って?』
お願い、と首を傾げられれば逆らえない。
惚れた弱みだ。
そんなちょっぴりSな幹人さんにもトキメク男心は、どMが故のことだったのか。
Sな幹人さんとMなオレ。
なんだそれは。
相性、最高じゃないか。
「あはははは、幸せ〜……」
「アッちゃんマジキチ」
辛辣な言葉を残して、地引優太こと、優兄ぃは立ち去って行った。
予備校があるらしい。
本当に最新刊の週刊誌だけ読んで帰りやがった。
ちゃっかりしているにも程がある。
いつもなら飛びかかってヘッドロックを決めてやるとこだけれど。
オレは1人になった部屋の中で、先ほど受信したメールを眺めた。
『今度の水曜日。空いてたらどこか行こうか』
だって。
「なにがあっても空けるっつーの!」
ニヤニヤと気持ち悪く笑ってベッドへダイブするオレ。
そのままゴロゴロとのたうち回って、爪先を思い切り壁にぶつけたのは言うまでもない。
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