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秘密コウサク
7



オムライス専門店、なんていう洒落た店で腹を満たしたオレと幹人さんは、早速裏街の商店街へと向かった。
ここの商店街は掘り出し物が割とあって、なにか欲しいものがあれば部活の奴らとたむろって足を運んでいる。
デカいショッピングモールみたいなのもあるけれど、いかんせん売ってるものの値段が高い。
ジーパン1本にウン万円なんて。
俺達くらいの一介の高校生にとっては、笑いの種にはなれど、よし、懐に納めてやろう、なんて気にはならない。
いつかオレもビンテージものの服とか欲しいと思ったりするのだろうか。
そりゃあ、タダでくれるっていうんなら貰わない手はない。
けど、そういう類の服は、価値をよく理解して、幸福感を得たうえで身につけないと意味がない気がするのだ。
ただ身に着けるだけならそこらへんの、それこそオレがいつも着ているジャージにだってできる。
オレはまだ、そんな特別な服を得た幸福感っていうのがよくわかってない。

そうこうしている内に、幹人さんに連れられていつのまにかショップへ入店していた。
買いものなんて、今日はこれを買う! っていう確固たる目的物がない限り行かないから、こうやって目的もなく店に踏み込むのは緊張する。気分はお洒落上級者だ。
うん、ホント、緊張っていうか、むしろ、変装した怪盗が盗みに来たかのような緊迫感だ。

オレは冷房の効いた店内を見回して、だらだらと汗を流した。
言わずもがな、冷や汗だ。
店内どこを見ても女、女、女、女。
店員も女。
マネキンも女。
女だらけだ。
当たり前だ、レディースもののショップなんだから。

それにしても圧巻だ。
かわいい女の子選り取り見取り。

「ちょっと、敦子」

「え?」

振り返ればちょっとムッとした幹人さんの顔があって。
なぜだか、しょうがないなぁもうみたいな感じで、笑ってため息つかれた。

「彼氏さんとお買いものですかー?」

「ッ!?」

いきなり茶髪の店員らしき女の子に声を掛けられて固まるオレ。
幹人さんが後ろでクスクス笑っている。

「今日はなにをお買いものする予定ですかー?」

カチコチになるオレをものともせずぐいぐい話しかけてくる店員。
なんちゅう戦闘力だ。
って違う。
なんとか切り抜けにゃあ。

「予定は特にないんすけど」

だからあっち行け、お願いします。
濃厚な拒絶を含ませたオレの視線はまるで効果がないようだ。
怯む様子もなくさらに一歩踏み出される。

「なるほどー。でしたら、今流行りの白ワンピとかいかがですかー? あ、もしかしてもうお持ちですかぁ?」

ワンピってなんだ。

「も、持ってません?」

白どころか、黒も赤も青も。
それ以前におそらくワンピ自体持ってません。
“ワンピ”不所持なオレに店員は目を輝かせると、「でしたらー」なんて呟きながら勝手に服を選び始めた。
雲行きが怪しくなって来て、縋るように幹人さんに視線を送ったが、にっこり楽しそうな笑顔を返されるだけ。
助けてくれそうにない。

「これなんかいかがでしょー?」

早いなおい。
店員がスッと白い服をオレにあてがって来た。
白い、ワンピースだ。
ワンピとはワンピースの略だったらしい。

「これ、ちょっと短くないすか?」

オレは当てられたワンピースを眺めて言った。

フリルが何段か入っていて、清楚かつ甘いフォルム。
可愛い女の子が身に纏えば絶対に似合うだろう。
が、オレは男だ。
胸にあるのは胸板のみ。
女の子がボン! キュッ! ボン! なら、オレはストーン! ストーン! ストーン! だ。
絶対似合わない。
店員には悪いが、ここは適当に難癖付けて断るのが妥当ってもんだ。

「短くないですよー。絶っ対似合いますから。着てみればわかります。彼氏さん、ちょっと彼女さん借りてもいいですか?」

「どうぞどうぞ」

「へ?」

「ではこちら試着室です。着られたら声をかけて下さいねー」

「ええ!? ちょっ」

「敦子、ここにいるからね」

「幹人さん!?」

ピシャンッ。

クリーム色のカーテンが幹人さんの手によって閉められた。
やっぱりSだ。

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あきゅろす。
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