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秘密コウサク
3


エアコン禁止令を姉ちゃんから出された。
節電のためということになっているが、きっと半分くらいは当てつけだ。
姉ちゃんが日々バイトに勤しんでいるのに対し、部活以外は家でぐうたらしているオレへの。
罪悪感は湧かんでもないが、オレはこれでいいのだ。テニスのスポーツ推薦でどこかの大学へ滑り込もうと決めているし。
これ以上肉体労働したら死ぬ。

そんなこんなで、こんな暑くて冷房もなくちゃあ、とてもじゃないが服なんぞ着ていられないと思ったオレは、仕方なくパックに入ったアイスをチューチューやりながらパンツ一丁でゲームをしていて、ふと気がついた。

「幹人さんと私服で会うの、初めてじゃね?」

思えば彼と会う時、99%部活のジャージだった。
残りの1%については、話せば少し長くなる。

敦子って制服着ないよね、そんな何気ない幹人さんの一言が始まりだった。
あの時は仏像の如くビシリと固まったもんだ。
ついに来たか…! って感じだった。
むしろ、毎日毎日ジャージ姿で下校するのをその日まで突っ込まないでいてくれたのが不思議なくらいで。
たぶんずっと気になっていて、でもなんとなく言いづらかったんだろう。
続けて、「終業式は部活ないって言ってたし、敦子の制服姿見れるかな」なんて微笑まれれば、オレも腹を括るしかなく。

苦悶の末意を決したオレは、あらゆる四肢を剃毛し、高校時代の姉ちゃんの制服を鞄に詰め込んだ。(姉ちゃんと同じ高校に入学したことがこんなところで活きてくるなんて、入学当時は考えもしなかった。)

そして駅の男子便所でズボンを脱ぎ捨てスカートに足を通し、忍びも唸る身のこなしで便所から抜け出したオレは、自分で言うのもなんだが、戦乱の世に活躍した忍者のようだった。

すっかり女子高生と化したオレを見て、幹人さん絶句していたっけ。
顔真っ赤になりながら。
オレによる数々の変態行為は間違いなくオレの中の大切ななにかを根絶して行ったが、……うん。
もう一回やってもいいかもしれない。
あの時ほど、人類の突然変異レベルの自分の女顔に感謝したことはなかった。
なにしろ、手を繋ごうが抱き合おうが、キ…キスしようが、全く支障がないのだ。
やめられねえよ。
病みつきになる。
マジ、神様ありがとうって感じだ。
うへへへ、幹人さんの唇、柔らかかったな……。

「って、ノロケてる場合じゃねーし」

服をどうするかだ。
現実的に考えて、姉ちゃんの服を拝借するというのが一番手っ取り早いが。

オレは無言で自分の胸板を眺めた。
揉んでみる。
痛い。

「こればっかりはな……」

約束は明日だ。
おどろおどろしいフォントで、“ゲームオーバー”と映し出されるテレビ画面を見て、オレは1人深いため息を吐いた。



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あきゅろす。
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