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ぺるでれら
ぺるでれら D

前回までのあらすじ
事前にシンデレラの家を調べておいた探偵王子は、さっそく押しかけました。



「…って早くね!?」
「善は急げですよ」
「急ぎすぎだよ〜!まだシンデレラのスタンバイ終わってないよ〜?」
奥の部屋でドタンバタン音がしてますね…召使いモードに着替えてる最中なんでしょうか。
「あれ、天城先輩がいませんね」
「あぁ、雪子先輩なら…ガラスの靴置き忘れたってくだりがツボに入っちゃって」
確かに笑い声が聞こえてきます…。
「けど靴ナシって、どーすんだよこのシーン」
「せっかくガラスの靴取り合うとこリハしたのにねー」
「…つか、りせちーやけに張り切ってねぇ?」
「あ、わかる?先輩がねー、『りせの演技見るの楽しみだ』って」
「あぁ、なるほどな」
上の姉が軽く苦笑しました。しかし、真相は花村姉様が考えたのとは少々違ったようで…
「打ち上げに手作りのお菓子持ってくって言ったら『それより姉役に集中してくれたほうが嬉しい』って」
「(グッジョブ相棒!!)」
「なんか言ったー?」
「いや何も?」

「うーい、お待たせしたっスー」
「待ってた待ってた…ふふっ」
ようやくシンデレラと継母が戻ってきました…天城母はまだ笑いが抜けきってないようですが。
「…じゃあ、始めましょうか」
「あ、ちょっと待って。伝言頼まれてるの」
天城母がちょいちょい、と皆を集めました。ただしシンデレラと王子以外を――
「ほれ、小西もこっち」
「………」
「どした?」
「…いや、…あんたがそんなカッコだとこっちも気が削げるっつうか…………ハァ」
「そのため息は何…?」
また心にダメージを負った上の姉をほっといて、天城母がひそぼそ耳打ちしました。

……………

ニヤリ。

「…おわりました?」
「うん」

…では再開。



「うぅ…悔しいけど、王子様が見初めたコがシンデレラだっていうなら…」
「…りせさん?どうしたんですかイキナリ」
「そーよねー、お姉サマたちは身を引くしかないわー」
「花村君、とうとう口調まで…!」
「だっ…!?セリフだっつの!!」
「だから、何ですかその急展開は」
それはですね、今ガラスの靴がないんで、王子がシンデレラを一目見て正体を看破したという設定にしたんですよ。
「あ?そうなんスか」
納得するシンデレラ。…をよそに、白鐘王子は口の中だけでつぶやきました。
「……何を企んでるんですかね、まったく」



最後は、結婚式のシーンです。



お忍び用の平素な服から衣裳チェンジのために城の舞台裏に来た白鐘直斗を、
下の姉と、継母、御者から元に戻った猫が待っていました。

「………え?」


反対側の舞台裏にいた巽完二に、魔法使い、上の姉、それにニセ王子はニイッと笑ってみせました。

「………あ?」






コツン――
白い革靴が一歩中央へ、
カツン――
白いヒールが床を鳴らし、

・・      ・・・
新郎の格好をした巽完二が、広間を見下ろす城の最上段に立っていました。
窮屈そうに襟元を何度も直し、反対側の入り口をチラチラ眺め…落ち着かないのは、衣裳のせいでしょうか、それとも…


――カツン

「………ッ」

もう一度ヒールを鳴らし、《その人》は息を呑む新郎の前に歩み出て、静かに口を開きました。
「…王子も柄じゃなかったですけど」
短い髪のかわりに、白いヴェールが風になびき、
「これも、僕には似合いませんね」

新郎の前に現れたのは、
名前のとおり、純白のウェディング姿の白鐘直斗―――

「そ、んな…こと…ねぇよ…」
巽完二は、魂を抜かれたような声でつぶやきました。
『似合う』の一言までは口から出てこなかったけれど…白鐘直斗はうつむけていた視線をそっと上げました。慣れない姿をしている気恥ずかしさで、少し頬を赤らめたまま。
だけど顔が赤いのは、彼女だけではなく――
新郎は、こわばっていた口元をムリヤリ動かし、「ぃ、行くぞ」とやっと聞き取れるほどの声を絞りだしました。
花嫁は、瞬きをひとつしてから、「はい」と答えました。

青空の下に歩み出る2人。新郎は花嫁を風から守るように、半歩だけ―――半歩だけ、近づきました。
2人を見上げる位置にはこの状況を企んだ張本人と仲間たちが集まっていて、
その中で久慈川りせが『直斗くん、こう、こう、』と隣の先輩と腕を組んで見せていました。
『バカか、』と巽完二が口の形だけで反論しようとして
その腕を、
そっと白鐘直斗の手がつかみました。
驚いてその顔を見ると、生真面目に『こうですか?』と従っているようで。
ギシ、と動きを止めた新郎を、花嫁は不思議そうに見上げました。
「巽君?」
腕を組んだまま、
「巽君―――?」
そのまま、ずっと。





――――――――閉幕。







「……ふぅ(台本を閉じる)」
「お疲れ、小沢」
「あ、また勝手に入ってきたね?」
「いや、全編出演のナレーターをねぎらおうと思って。ずっと喋り通しだったろ?」
「誉めても何も出ないよ?…あ、お返しに特訓してあげよっか。たっぷりキミの演技見せてもらったし」
「え、マジで?」
「ふふっマジで。……でもさ、このシンデレラ、一応最後はフィナーレっぽく終わったけど…これでよかったのかなぁ?」
「んー、あとは総監督とスポンサーがどう思うかだな」
「総監督?スポンサー?」


   *   *   *


「あはは、へんなの、おもしろーい」
「面白いのか菜々子、その…シンデレラ…?」
「うん、お父さんもいっしょに読もう?」
「いや俺は…………まあ、たまにはいいか」



めでたしめでたし














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