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ぺるでれら
ぺるでれら C

前回までのあらすじ
王子はなぜかクマでした。



「巽君」
「お、おう」
「僕にもっと近づいてください」
「お、おう!?」
「巽君が離れていってしまうと…困るんですよ、僕」
「お、おま何言っ――!!」
「あまり離れると…………………踊りにくいんですよ、こういうのって」


ただの舞踏会のシーンでした。



結局ほぼ満場一致で、王子役は白鐘君に戻りました。
今はホールの真ん中で踊っ………手をつないでひたすら回転しています。特にシンデレラの動きはひどいですね、ガチガチです。
「手ぇつなぐだけでイッパイイッパイなんだろな…」
こうやって見てると、この2人にした『意味』っていうのがわかりますね。
「だっしょ〜?」
…花村君じゃないよね、配役考えたの。(ていうかずっと女装のままだけど…え、慣れた?)
「はいスイマセン考えたのあいつですよ。……あと( )内には触れないで…」
…えー、さてと、そろそろ12時かな?(インカム)松永さん、聞こえる?
『………』
あれ?松永さーん?
『…は、はい!』
…もしかしてあなたも緊張してる?
『いえ!がんばります!』
「…ビミョーに話噛み合ってなくね?」
あの松永さん、一生懸命なのはすごくいいことなんだけど、そんなに気負わなくても大丈夫よ?すでにグダグダだから。
『でっでも、せっかくわたしのために12時の鐘の音をラッパに変えてもらったのに…』
せっかく吹奏楽部に協力してもらえるってことで、演出変えてみました。
『…だから、トチらないようにがんばらないと!』
「ええ娘や…」
ん〜……仕方ない、魔法使い君!
「ん?」
松永さんをリラックスさせてあげて!
「わかった。松永ー?」
『あっ、先輩…!』
「肩の力抜いて。ちゃんと練習したから大丈夫だよ、松永ならできる」
『……はい!』
「そーそ、俺も練習ちらっと見たけど、あれなら大丈――」
『あのっ、スイマセンこれから話しかけないでください…!集中しますので…!』
「……さいですか」
はいはい、そろそろ時間ですよー。




時計のてっぺんで、長針と短針が重なる時を
4桁の数字が0を刻む瞬間を
昨日と明日の境目を
―――甲高いラッパの音が知らせました。



「うぉ、そっか12時なったら行かなきゃいけねぇのか」
「巽君?」
「ぅ………」
固まったままのシンデレラ。
―――ってシンデレラ!?急いで帰らないと魔法とけますよ!?
「わ、わかってんよ」
そのわりには白鐘王子の手を握ったまま動きませんね。
「ぐ…!?」
「ちょっと完二〜、離れたくないのはわかるけどぉ」
「つか魔法とけんの待ってても無駄だぞ、お前最初っから女役(つまり女装済)なんだから」
「うっせーぞてめぇら!!」
「巽君」
「………っ!」
「この後のこと(あらすじ)は、わかってますから」
静かに、白鐘王子は宣言しました。
「…必ず、君のもとへ辿り着きますから」
「…なぉ…」
「だから」かすかに口元をほころばせて「安心して行ってください」
「…!おう!」

2人の手が離れ、
シンデレラは身を翻すと、ホールを突っ切り、大階段を二段飛ばしで去っていきました。





娘たちの帰った後。
静かになった城の大階段で、ひとつの人影が立ち上がりました。
「…やっぱないよなぁ」
小さくため息をついたその人物に、いつもの帽子と紺色の服に着替えた王子が近寄ります。
「あ、白鐘さん」
「ご苦労さまです、というか何してるんですか?」
「いや、アレがないなぁと思って…」
「ああ、ガラスの靴ですか」
白鐘君の察しの早さにちょっと驚いた顔をして、それから階段の人物は薄く苦笑しました。
「あいつ靴置いてくのカンペキ忘れてったみたいで。シンデレラのキーアイテムだってのに」
「大丈夫ですよ。靴を手がかりにして今から探しに行くわけじゃないんですから」
白鐘王子は不敵に微笑んで、

「もう、シンデレラの家が何処かはわかってますし」

「確かにそうなんだよな…」
「とは言っても、12時までに調査が終わってホッとしてるんですよ」
「白鐘さんがギリギリまで調査に加わってくれたからでしょ」
「クマくんが代役で時間稼ぎを引き受けてくれましたからね。半分は、単純に王子をやりたかっただけでしょうけど」
それに、と前置きして、王子は階段の人物――王子の従者役に言いました。
「僕一人では突き止められなかったと思います。やはり君のおかげですよ、小西君」
「そりゃ、どうも」
小西尚紀君は礼を言うと、こちらを――え?天の声の方角を向きました。
「気になってたんですけど、なんで俺、王子の従者役なんですかね」
えーと、『1年生どうし仲良くなればいいと思って』だって。
「…まったくあの人は…」
……『あと、Wナオちゃん』
「……あの人は…!!」
…まぁ言いたいことはわかるけど、とにかく話を進めてください、文字数がまたオーバーしかけてるんで。
「あ、でもガラスの靴ないまんまですけど。今夜の人物がシンデレラだって証明できないと困るんじゃ?」
ふふ、と白鐘君が笑います。「犯人を追い詰めるのとは違うんですから。心配しなくても《彼女》が自分から名乗り出てくれますよ。まぁ母と姉の説得材料は必要になると思いますけど」
「(王子やってるときより今(=探偵やってるとき)の方がイキイキしてるなこの人…)」
本業ですからね。
「それでは行きますよ」
「え、今から?いや物語だと、王子がシンデレラを探すのは翌日からだったはずじゃ」
「居場所がわかってるのに明日に延ばす意味もないでしょう。それにぐずぐずしてる間に証拠隠滅でもされたら困ります」
「……花嫁探し、だよな…?」














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