その大きな背中に、小さく呟いた
ふと見た背中は、
とても広くて、頼りがいがあって
少し、───不安気で。
いつもどうりの、『彼』だと思っていたの。
けれど、放課後が近づくにつれて『彼』は───、
「……」
結局、行動をおこす事なく放課後。
目の前には、『彼』の背中。
ホンモノではないけれど。
「姫さん?どないしたん、部活行かんのー?」
「忍足…、」
あたしが視線をさまよわせると、すぐに理解したような顔でぽん、と背中をおした。
「姫さんやないとどうにもならんよ、アレは。まぁ、跡部も人の子やったっちゅー事やけど」
「…強いようで、弱い人よ?景吾は。一人で抱え込もうとしてしまうから…」
「それが出来るんは、姫さんがおるからやろ?」
「…そうだと嬉しいけれど」
「自信持ってええんよ?姫さんやないと見せん顔、ようけあるしな、あの俺様は」
「あたしで、大丈夫…?」
「せやから自信持ち。姫さんやないと、あかんのや」
「…忍足、」
「ん?」
「今日の部活、任せていい?」
「あんな偽物の帝王は氷帝(うち)にはいらん。たのむで?」
「…ぅん。じゃ、よろしくね!」
決意を胸に、歩を進める。
いろいろ考えているんだとは思うけれど、それはすべて捨ててしまってね。
全部聞くから、その不安はすべて受け止めるから、ね?
三日後、コートに立つは冷たく凛々しき、氷の帝王。
広く、頼りがいのある、強き『彼』の背中。
全国大会直前。
(200805)
title)
無料HPエムペ!