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おお振り
キャプテンの苦悩再び
「栄口ー!!」


あ。と思った時にはもう遅くて、水谷は栄口に飛び付いていた。
(主に)隣から聞こえる地響き。
さながら黒の帝王の御光臨か。
花井は重いため息を吐いて、キリキリと痛みだす胃の辺りを擦った。









「…阿部さん」
「なんだよ」


嗚呼、神様。俺また何かしましたか。
何で俺ばっかり。と思いたくなるくらい、阿部の不機嫌はMAXです。
こいつ堅気じゃねぇよ。ってくらいの顔してる。助けて神様仏様。


「回収してこようか?」


恐る恐る、決して阿部の機嫌をこれ以上損ねないように。
俺は未だ栄口にくっついている阿部の不機嫌の元凶…水谷を指差して言った。


「…いい。触んな」

(益々機嫌悪くなった――!!)


阿部の眉間の皺が伸びる日はあるんだろうか、と心配するくらい深く刻まれた、皺。
目はギラギラと光って、多分、水谷しか映していない。


(…阿部ってなんだかんだ一途だよな)


ふと、そんなことを思った。


「俺が一途?」

(ココロ読まれた――!!)

阿部は見下したような目で俺を見て、ハッ、と鼻で弾いた。
胃痛は最高潮。
だれか胃薬ください。


「勘違いすんなよ花井」
「…」
「俺以外にあのドMの相手できんの誰がいんだよ」
「………」


もう泣いてもいいですか。
キリキリキリキリ、胃は相変わらず悲鳴を上げている。
阿部はまた水谷のほうへ視線を戻すと、一つため息を吐いて、水谷を回収しに行くのか歩いていく。
一瞬見えた、赤い耳。


「………あーもう!」


何で俺ばっかり。
そう思う。思うけど、やっぱり俺はこいつらが好きなので。
胃痛は日々酷くなっていく一方だけど、こういうのもまぁ、


「……悪くない」


と思う。


とりあえず、またケンカし始めた阿部と水谷を、栄口と止めることが、最優先。

キャプテンってホント、大変。

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