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ミルク






じりじりと強い日差しが照り付ける夏の日の午後。

夏休みであるにも関わらず、職場である保健室で教務机に向かうハデスの姿があった。

黙々とペンを走らせるハデスが作っているのは、今時手書きの「保健だより」
登校日に配るべく、熱中症についてとか、プールの危険についてとか、夏の注意事をせっせと書き綴っている。






「よし。出来た。」

キィ、
と椅子の背もたれに体重をかけて、出来上がった原稿を眺めていると、


カタリ、と横の白いカーテンが揺れた。


「‥終わった?」


窓側のベッドにはさも今起きたという風の藤が座っている。



「うん。藤くん、喉渇いてない?お茶入れようか。」


「んー。」



夏休みだというのに、私服姿で保健室のベッドで寝転がる藤。

というのも、自宅で連日にわたりごろごろと寝耽っていたところ、山蔵に散々に説教された為、避難がてら涼みに来たという訳だ。




「はい。クーラーが効いてるから、暖かいお茶にしたよ。」


「ん。さんきゅ。」



ハデスから湯呑みを受け取り、お茶を飲み干すとまたごろりと寝転がる。



そんな藤を咎めるでもなく、微笑ましく眺めるハデス。



「そういえば、アイスがあるんだけど、食べる?」


「マジで?食べる。珍しいな。アイスなんて、」


「君達が喜ぶかと思って買ってきたんだけど‥、よく考えたら夏休み中だったんだよね。」


「アンタってほんと、そうゆうとこ抜けてんなぁ。」



ハデスが冷凍庫から持って来たのは白い棒アイス。
甘いミルク味のものだ。



「はい。どうぞ。」



そう言って、棒アイスの先をずいっ、と藤の口元へと差し出した。






「…なに?」


訝しげにハデスを見上げると、
にっこりと笑って、


「食べさせてあげるよ。」



と言う。

少し悪戯じみた顔。

藤と二人っきりの時にだけ見せる顔になっていた。




「ったく。」

ふぅ、と小さく息を吐いて、


雫のにじむ白いアイスに、小さな赤い舌を伸ばす。




つ、と舌を先端にあてて、辿る様に上まで舐め上げる。

唇でちゅっ、と音を立てて先っぽを吸うと、

棒ごと口にふくんで、唇と舌で舐めあげ、冷たい甘さを味わう。



「‥っふ、」


けれど藤の意識の先は、それを持ったまま熱を孕む金色の瞳で、藤を見つめるハデスに向いていた。



誘うように舌を絡めて、
ちゅぱちゅぱとわざと濡れた音をたてる。


上目遣いでハデスを見つめてやると、


不意に、喉奥に冷たい棒を押し込まれる。





「っんぅ!」


ハデスが棒アイスを藤の咥内に擦りつけるように前後に動かしてきた。





「んっ、んっ、んっ、」

鼻にかかった声をあげながら、それに応えようと懸命に舌を動かす藤。




赤く濡れた唇の端から
つぅ、と白いミルクが伝ってぽたぽたとシーツに落ちていく。





しばらくちゅぽちゅぽと水音を響かせて


「あ。」


と短い声の後、ぼたりと白い固まりが溶け落ちた。





「‥溶けちゃったね。」


「あ〜あ。もったいねぇな。」



藤が責める様に言うと、


「ごめんね。」


全く悪びれなく微笑むハデス。




「手も口もベタベタなんだけど‥。」



「そうだね。」



「綺麗にしてくれる?」



今度は藤から、悪戯っぽい視線。






「もちろん、喜んで。」









満足そうにその甘い唇にキスをした。









冷たく濡れた君の唇

甘いミルクの味がした。























悪戯っぽいというか、
変態っぽい‥。
先生ェ…。

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あきゅろす。
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