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ふたりでずっと







ほころんだ花々に春の訪れを感じながらも、
まだ肌寒さの残る季節。


もう薄暗くなってきた保健室で、
二人分の影がごそごそと動いた。


「藤くん、寒くない?」


「ん、平気。」



藤とハデス、
窓際のベッドで二人寝転んで、抱きしめ合うよう寄り添って、
ひとつの布団に包まっていた。











「もう明後日だね。君の卒業式。」


藤は中学三年生になっていた。


もうすぐここを卒業する。




すっかり綺麗に掃除された、
二年もの間藤専用だったこのベッド。

まくらだけは今だ藤が持ち込んだ私物のものだ。








「今日はこのままずっと、こうしていようか?」


朝までずっと、
この思い出のベッドで、



「‥いいの?」



それは藤も同じ気持ちだった。




「いいよ。」



このベッドでこうする事も、
きっと今日が最後だし。


そうハデスが言うと、
藤は、ほんの少しだけ寂しそうな顔をした。








初めて手に触れたのも、

初めて好きだと聞いたのも、

それに好きだと応えたのも、

全てこのベッドでの事だった。


キスも、
恋も、
愛することも、


このベッドの上で知った事。









「君にハデス先生って呼ばれるの、嬉しかったよ。」


柔らかな茶色い髪を撫でながら、
思い出すように微笑む。


「もう先生じゃなくなっちゃうね。」




残念そうにそう言うと、真っすぐに見つめる淡い色の瞳と目線が合う。




「これで終わりみたいに言うなよ。いつだって会いに来るし、会いに来いよ。」


「もちろん!」


「休みの日はデートしよ。電話もメールも、ちゃんと返せよ。」

「頑張るよ。」



「授業中には、会えなくなるけど‥、」



ふと俯いてハデスにより強く抱き着く藤。



「‥藤くん。」






「その分俺も大人になるから、だから寂しくないよ。逸人。」



少し赤い顔を上げて、
しっかりとハデスの目を見ながら、

そう告げた。










「わ。」


ぎゅうっ
と音がしそうな程しっかりと抱きしめられた藤。


「どうしよう。先生って呼ばれるよりも嬉しいよ。」




ハデスのあまりの感激ぶりに思わず笑みがこぼれる。








「逸人。」

「ふふ、もっと呼んでくれる?」



「ふ、何回でも呼んでやるよ。」





一晩中でも。









そう、
この先にある二人の時間は

いくらだって続くのだから。














大好きだよ。

逸人。




大好きだよ。

麓介くん。




















大好きだよ。

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