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美味しい関係(過去拍手G)

色とりどりの食材が並ぶテーブル。
野菜サラダ、コンソメスープ、メインのオムライスにはケチャップで赤いハートマーク。
デザートのフルーツもカットしてグラスに盛り付けした、見た目も華やかな仕上がりだ。


「…ハートマークって。」

スプーンを持って向き合う藤。


「き、気に入らなかった?」

エプロン姿のこの部屋(狭い1K)の主、ハデス。


たまの休日に、こうして二人で部屋で会うことは良くあることで、お互い外で会うより気兼ね無く過ごせる為、自然と食事も部屋でする事が多くなった。


「‥どう、かな?」


「んまい。」


もごもごとオムライスを口に運びながら答える藤。


「‥良かったぁ。」


「大袈裟だな。飯くらいで。」


「‥う〜ん。最初の頃ずいぶん藤くんに無理させちゃったから‥。」


ハデスは料理が下手だった。
というよりは病魔の影響により食に対する意識が希薄だったのと
美味しいという感情が薄かった為、味覚もほぼ働いていなかったのだ。

その為、初めてて作ったハデスの料理はまるで味がしなかった。

見た目こそ普通なのに何の味もしない料理に、ハデスの食生活を垣間見た藤は散々文句を言いながらそれでも全て作っ平らげた。

そんな事があってから、何度も何度も練習しては藤にダメ出しをくらい。

(流石にそこは料亭の息子、普段駄菓子ばかり食べていても、料理へのダメ出しは厳しい)


それでも見ているだけの藤に味見してもらってはようやく最近は「美味い」と、言われるようになった。


「良かったじゃん。美味いよ。先生も食べてみれば?」

「うん。じゃあ、いただきます。」


お互いに描きっこしよう、と言ったケチャップは、[ハデス]と殴り書きで書かれている。

(血文字のようだ‥。)なんて少し感じても、愛しい恋人が書いてくれたもの。嬉しくならない訳が無い。

うきうきしてスプーンを口に運ぶ。






けれど、
やっぱり、
味はない。

感じ無いのだ。
クルエルがいるハデスの体では味覚すら奪われる。



「美味いだろ?」

覗きこむ藤の顔。
口元に赤いケチャップ。

指先で拭い取って

「美味しいよ。」

と答えた。










君が僕の側にいる。
その時
確かに
「美味しい」
と、感じた。








恋する心も
美味しい気持ちも
君が教えてくれたんだ。

そう言葉にしたらその顔を
ケチャップみたいに真っ赤に染めて
ばか
と、小さくつぶやくだろう。


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