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080狙った獲物は逃がさない(光)




七原くんとは、よく目が合う。
もちろん、彼が本当に見たいのが私じゃない事はわかっている。彼がつい視線で追ってしまうのは、私がいつも隣に置いている名前だ。
全くわかりやすい男の子だわとつくづく思う。周りの男友達も、よくあのオクテに付き合ってのんびり二人の仲を見守っていられるものだわと感心さえする(特に、三村くん。七原くんよりは格段に上手に隠しているけれど、私の目からすればまだまだよ)。

私だったら、片時だってこの子を手放しはしない。
たった10分の休憩時間でも、彼女を呼び寄せて他愛もない話に花を咲かせるの。

七原くんと目が合うのはそんな時。
ぼんやりと熱っぽい視線で名前を見てから、じとりと羨ましそうな目つきで私を見るのだ。本当に、かわいいくらいにわかりやすい。そんなに睨んだって、名前はあげないわよ。

名前の肩越しににこりと飛び切りの笑顔を贈る。すると彼はちょっとバツが悪そうに眉尻を下げて、ふいっと視線を逸らした。そして三村くんたちとの談笑に戻る。
しかし彼の視線は、またすぐに名前を捜して宙をさ迷いだすのだ。

私は自分の中に嗜虐的な気持ちがぶわりと湧き起こるのを感じた。みんなが欲しがる女の子を隣に置いている優越感、その事実を唐突に誇示したくなったのだ。
静かに高揚してゆく感情に任せて、名前の頬に軽く口づける。

私の眼前にあるのは、突然のことにきょとんと首を傾げつつ、私だけを見つめる真ん丸な瞳。
汚れを知らないピンク色の唇の端をちょこっと持ち上げて微笑みながら、彼女は私に「なに?突然」と歌うように言った。ふわり、と胸にあたたかなヴェールがかかる。

私が名前に「別に、なんとなくよ」と微笑み返したのと、七原くんが真っ赤な顔をして思わず、がたり、と派手な音をたてて立ち上がったのがほぼ同時。

再び名前の肩越しに視線がかち合う。
悔しそうに唇を歪める彼に、私は勝ち誇ったように笑いかけた。あなたはまだこの子の頬に触れたことすらないでしょう?
すると彼がわなわなと唇を震わせ打ちひしがれたような目をするものだから、私の嗜虐心はますます刺激されるのだった。

さあ、次はどうしようかしら。



ヘロディアは艶やかに笑う、狙った獲物は逃がさないわよ、と

私のかわいいサロメ、さあ踊って頂戴な



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