061寵愛(光) 「えと、優しいとこ」 「それから?」 「なんにでも前向きなところ」 「それから?」 「天然なところ?」 「それから?」 「んー……あ、歌を楽しそうに歌うなあ」 「それから?」 「えーと、誰にでも優しい」 「あら、それ二回目よ」 私がにっこり笑って告げると、彼女ははあ、と盛大なため息をついた。緊張が解けたみたいに背中を丸めて、「みつこぉ」と情けない声で抗議する。 ことの始まりは私の一言。 お昼を食べ終えた後の緩やかな時間の中で、教室の窓から幸せそうな顔をしてグランドを眺める彼女に、「名前は七原くんのどこが好きなのかしら?」と尋ねたのだ。 名前は頬を微かに紅潮させてしばらく考えてから、おずおずと話しはじめた。 そして話は冒頭に戻る。 「そんなに急かさないでよ」 まだ頬は赤いまま、眉尻を下げて唇を尖らせる彼女。 怒った顔もかわいい、なんて言ったら、機嫌を損ねるかしら? 私がふふ、と笑うと、彼女は「もー」と小さく不満の声を漏らしてから、 しかしすぐに「えーっと、」とまた愛しの彼を想うのだった。 ほんと、かわいいんだから。 愛せぬ君を寵愛す |