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033かつての栄華(光)


私のことをよく知りもしないで私について喋る人は、よく、私と貴子が似ていると言う。

そんな時私は、それはただあなたが私と彼女のことを近寄りがたく思っているだけのことでしょう。と思う。

さっきだって。

隣のクラスの女子が「なんか、千草さんと相馬さんって雰囲気似てるよね」と談笑していたのを耳にした。

私がそばを通りかかった時、その子たちはしまった、という顔をして、さっと話題を昨日のドラマだかにすりかえた。

私なんか気にならないふりをしながら、視界の隅でちらちらと私を見ている。

私と彼女らの間にある程度の距離ができた瞬間、私の遥か背後でどっと笑いが崩れたのが、分かった。



ここは、そんなくだらない空間。

学校なんて、名前がいなかったら絶対に行かないわ。





「ねぇ。
私と貴子って、似てると思う?」

私の突然の問いに、名前は少し戸惑ったように「え、どうしたの?急に」と質問に質問を返した。

私は先程の出来事を名前に言うのがなんとなくためらわれて、
「いいじゃない、別に」
と口先だけで言葉を紡ぎながら、ぐいと身を乗り出した、「で、どうなの?」

名前は気押されたように視線をすっと上げて、うーん、と悩む。
自分の中に、名前の答えを早く聴きたがっている私を見付けた。

ややあって、彼女は視線を右斜め上に固定したまま、ゆっくりと口を開いた。

「似てない、かな」

彼女のその言葉は、私の中に暖かい感覚を産み出した。
そう、ひどく暖かい、感覚。

「あ、でも、私のこと"すき"って言ってくれるあたりは同じだよね」

名前は視線を私に戻してそう付け加えると、あの可愛らしい無邪気な笑顔を惜し気もなく披露してくれた。

私は名前の笑顔につられてちょっとだけ微笑んで、「へぇ。そう」と短い感嘆の言葉をもらした。
名前といると感じる、不思議な安堵感を抱きながら。



ヘカテーにかつての栄華を

もしも、それを望むなら。



あきゅろす。
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