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鬼畜王子


「俺は…認めねーッ」

「認めるも何も、負けてんじゃん?後ろ取られるようじゃ番張ってるなんて言えないぜ?」

「…ッ」
渋谷は本当の事なので言い返せない。
第一、何故コイツが自分よりも上なのか…?
喧嘩が強そうにも見えない身体で。

「で、負けた奴は従うんだろ?」
俺は忘れていた事を思い出される。

「…あぁ」
悔しいが負けを認めるしな無い。
今まで自分が誰かの下に付いた事なんて一度もなかったのに!

「なら明日から俺に従えよ?ククッ、楽しみだな」

柚月は鬼畜に微笑みと屋上から姿を消した。

一人取り残された渋谷は地面にしゃがみ込んだ。

「…こんな事って…ッ!!」
悔しさの余りに硬いコンクリートで出来た地面を強く殴った。
拳から血が出ているのも気にせずに渋谷はもう一度拳を地面に叩きつけた。













――翌日―

教室に入ると賑やかに騒いでいる中、一人だけ本を読んでいる柚月がいた。
昨日と変わらず浮いている存在だ。
だけど、番長交代なのにも関わらず皆いつもと同じ雰囲気だった。

もしかして、まだ誰も知らないのか?
確かに昨日は二人しか居なかったので、柚月か俺が言わないと分からないだろう

「あ、慶太おはよ〜!」
やはり、いつもと変わらない。
昨日の事がショックだった俺は少しばかり安心した。

「おはよ」
だけど、番長交代を知ればこんな風に明るく話しも出来なくなるかもな…。
ちょっと寂しくなるぜ。

「安心しろ。昨日の事は黙ってやる」
後ろの席に座る柚月が小声で話し掛けてきた。

「何だと…ッ!同情でもしてんのか!」

「知られない方がお前の為でもあるだろ?」

「…」
確かに知られたくないのは正直な答えだ。
あれだけ大口を叩いて来た俺が逆に命令を聞く側に回るのは情けない気がする。

「別にガキ大将みたいな事には興味ないんでね。今まで通りお前がしてろ」

「お前お前、言うけどなッ俺には渋谷慶太って名前があんだよ!」

「秘密にしてやる代わりに俺には従えよ?慶太」

名前を教えた途端、馴れ馴れしく人を呼び捨てにしやがって!
だけど、番長交代を皆にバレるよりはコイツに従ってた方がマシだ。



と、その時は思っていた…



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