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鬼畜王子



「じゃあ俺は先に帰るぜ」

屋上から出て行く柚月を追いかける事なく、渋谷はその場で腰を抜かした。


なっ、なっ、何だッ―…!!

俺は唇をゴシゴシと拭き取った。
気持ち悪いぜ、アイツ!
俺にキスして嫌がらせか!
確かに今まであんな嫌がらせは受けた事はねぇ―…

唯一の救いは周りに誰も居なかったこと。
こんな場面仲間達には見せられない。













「遅かったじゃん慶太?」
教室に戻ると心配してたのかクラスの奴等が集まって来た。

「あ、あぁ…悪ぃ」
俺は目を柚月に向けた。
何事も無かったようにすました表情をしている。

「どうだったんだよ?柚月の奴、傷一つないぜ?」
ボコボコに帰って来ると思っていた奴らは無傷で戻って来た柚月に戸惑っていた。

「強く言ってっから大丈夫だって」
自分の攻撃を交わされ代わりにキスをされたなんて言えるはずも無い!

あぁ〜ムカつく!!
こんな状態でコイツと同じ空気吸ってたくないぜ。

渋谷は柚月の顔を見たくなく教室を出て行った。

「どうしたんだ慶太?」
「さぁ…?」












「クソッ!」
まだ腹の虫が治まらない渋谷はいつものお気に入りの屋上で昼寝したかったが、さっきの思い出したくも無い光景が蘇って来る。
仕方ないので、普段はあまり行かない保健室で寝る事にした。

だが、眠りに入っても先程の出来事が脳裏に焼き付いて離れない。
何度も寝返りを打ちながら深い眠りにつきたいのにモンモンと、柚月の顔がドアップに映り出される。


「あぁ〜ッ、もう!!」
渋谷はガバッと布団から出た。
こんなんじゃ、眠れねー!
ここはもう一度、放課後呼び出してこの気持ちを爆発させてやるッ!!












――放課後―

「帰れないんだけど?」
教室から出ようとすると、そこには仁王立ちで立っている渋谷がいた。

「お前にもう一度、俺がどれだけ凄いかを教えてやる!」

「…は?ウザイんですけど」
相手にしてられないと柚月は渋谷の横を通り過ぎようとした。

「待ちな」

柚月の腕を掴み止める。

「離せよ」

「離さない」

「………」
互いに睨み合い両者とも譲らない。




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