嫌われクリスマス
地獄の知り合いには全然地球人がいない。
辛うじて地球人(人外だけど)のセルも、元来戦う為だけに生み出されたらしいから、クリスマスなんてイベントは知らないのだ。
期待する方が間違ってると思って、ハロウィンの時の如く私から盛り上げていこうか、なんて思っていたのだけど、
「……あれ」
みんなはいなかった。
毎回毎回馬鹿みたいに針山で唸ってるセルも、道に迷ったときいつも助けてくれるギニュー特選隊の人も、おいしいご飯を作ってくれるラディッツさんもいない。
血の池や針山や灼熱地獄を探したが全然いない。
地獄で集会でもあるのかとも思ったが、他の悪人達はちゃんといる。
――とうとう避けられてるか? 私。
嗚呼嫌われクリスマス。悲しい。
すっかり気分も落ち込んで、閻魔様のところに帰ろうとした時、針山から私を呼ぶ声がした。
「……ザーボンさん!」
久しぶりに見た気すらするザーボンさんの顔に私は思いっきり突っ込んだ。
「ぐふぁッ!」
「ザーボンさん! 私なんか嫌われましたか!? テンション高過ぎました? 嫌われクリスマスは嫌なんですー!!」
「ちょ、ちょっと待て! 何の話だ!?」
「え、いやだって探しても探してもみんなだけ見つからないからとうとう愛想尽かされたのかと思いまして!」
「まさか! 勘違いもいいところだ!」
なんか逆に傷つく。
いやでも勘違いで本当良かった。が、みんなはどこに?
「ついて来い」
ザーボンさんに手を引かれ、針山の洞窟(こんなのあったのか!)に入って行くと、何故だか前が明るくなっていく。
ついに外と変わらないくらい明るくなった時、私たちは開けた場所に出た。そこには、
「めりーくりすます」
片言のメリクリと一緒に鳴ったクラッカーと、みんなの姿があった。
もしかして、準備してた?
「今日はくりすますとやららしいじゃないか」
「あのじじいにお聞きしましてね。この蝉と猿と協力するのは不本意でしたが」
「そりゃこっちの台詞だ。ま、暇潰しにゃなったがな」
みんなの待つ中心には、たくさんのお菓子(きっとギニュー特選隊のものだ)と、いびつで絶対手作りだと分かる小さなケーキ。
「俺たちが作ったんだぜ!」
「ナッパは散らかしただけだろ!」
「うるせぇ弱虫ラディッツ!」
さっきまでの不安とか寂しさとかぜんぶ消えて、私はこれを言うのが精一杯だった。
メリークリスマス!
(ありがとう、みんな!)
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