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ちらり、うごいた、そこまで。



 このあいだ、G様……げふん。界王様とお茶している時に、悟空(呼び捨てにしろといわれた)がすごい勢いで走ってきて、

「なまえ! 子供が出来た!」

 なんて言うから、せっかくいただいた紅茶を思い切りG様にふっかけてしまった。

「な、な、なんですか! 子供って、悟空は元々息子さんがいたじゃないですか」
「もう一人生まれたんだ、悟天って名付けたみてえだ」
「みてえって誰かから聞いたんですか?」
「おう、占いババが来ててよ、聞いたんだ」

 占いババさんがどなたかは全く存じ上げませんが。
 悟空に第二子誕生。こりゃあめでたい。お伝えしなくては。

 誰にって?



「バーダックさん、ラディッツさん、おめでとうございます!」
「はァ?」
「どうしたよ、何がめでたいんだ?」
「や、悟空に第二子誕生らしいですよ」

 二人はぴっちり固まって、目が今にもポーンと飛んで来そうだ。

「ち、ちょっと待て。第二子って、俺ァ第一子も知らねえぞ」
「あんなガキが二人! 世界の終わりじゃねえのか?」


 二人の反応は面白かった。
 何でもラディッツさんが悟空に倒された一因に第一子である悟飯くんも関わっているらしい。恐るべしサイヤ親子。

「兄弟で殺し合っちゃうなんてそーぜつな家族ですねー」
「そもそもサイヤ人は愛だの何だのって言うものよりも戦闘、戦闘、戦闘、だからな。カカロットのように頭を強く打つとかよっぽどのことがない限りあんな生温い家族なんてものはつくらないんだよ」

「あ、でももう一人のサイヤ人の方にもお子さんが産まれたって言ってましたよ」
「ベジータか」
「!?」


 急に聞こえた声にびっくりして後ろを向くと、そこにはセルがいた。
 その顔は今までみたことないくらい憎しみに歪んでいて、ああ、この人はやっぱり悪人なんだ、と、冷えきった頭の隅で考えた。

「トランクス……あいつさえいなければ、俺様の計画は完璧だったのに」


 隣でバーダックさんとラディッツさんが、「ベジータってあのベジータ王子か!? あいつが子供……」なんて言ってたが、私は実際それどころではなかった。
 セルの殺気にあてられていた。


「……あ、おいセル! やめろ!」
「!」

 バーダックさんの声にはっと気付いた様子のセルが目に入ったときは、もう殺気なんて感じなかった。

「……すまないなまえ、大丈夫か?」
「うん」
「私としたことが過ぎたことを……すまなかったな」

 そう言って笑うセルは、もういつものセルだった。





「――で、バーダックさんは二人のお孫さんに恵まれたわけですねー」
「おう。俺ァとりあえずフリーザの野郎がくたばったから何でもいいんだけどよ」
「へー」


 ちらりと見るとセルはまだ空を見つめて、今は殺気は感じられないけど、私に気付くとふと笑った。


「セルは、悟空たちを倒してどうしたかったの?」
「さあな。孫悟空を倒すためだけに造られ、自分では意思を持って動いたつもりだが、今考えるとそれすらプログラムの一つだったとしか思えん」
「……今は?」


「どうだろうな。もし今、孫悟空が戦えと言ったら戦うだろう。ただ――お前が嫌だと言うなら戦わない」


「……え?」
「孫悟空の次男か……見て見たいものだ」


 セルは私が言葉の真意を聞く前にどこかへ行ってしまった。







ちらり、うごいた、そこまで。
(ラディッツおじさん、バーダックおじいちゃんって呼んでいいですか?)
(絶対やだ)(てゆうか殺す)
(もう死んでますって!)




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