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再会とゴキブリ


 界王様、という人がいるらしい。
 何でも、界王様は東西南北の四人いて、それぞれの宇宙を司っているそうだ。

 そんなスゴイ人が、何故だか私を呼んでいるらしい。

「界王様は今、天界にいらっしゃる。この先をひたすら真っ直ぐ飛んだら着くだろう」
 と、閻魔様は果てしない雲の先を指差した。

「どれくらい飛ぶんですか?」
「一週間くらいか」
「いっ……!?」
「嘘だ。あの飛行機に乗れ。あと三分で出発してしまうぞ」

 閻魔様はピンク色でちょっと可愛い小さな飛行機を見た。
 ゆうれいくんが「天界行き、後三分で離雲します――」と叫んでいる。
 私はわかりましたとだけ頷くと、その飛行機に乗り込んだ。

 離雲(確かに陸ではないが微妙だ)した飛行機は、何やら光速を超える速さで進んでいるようで、窓から見える景色はだ。

 天界に行くのは体を持った死者達だけのようで、先刻までみていた気持ち悪いくらいの数の人魂は一人もいなかった。

「まもなく着陸します。シートベルトを閉めてお待ちください」

 ――着陸? 天界には陸があるのか。

 シートベルトを閉めたわりに着陸の衝撃は少なく、窓から見える景色が止まって初めて着陸したのだと気がついた。

「お疲れ様でした。またのご利用お待ちしておりまーす」

 ゆうれいくんの間の抜けた案内を聞きながら飛行機を降りると、私を呼ぶ声が聞こえた。

「なまえとやらはお前か?」

 声のする方に目を向けると、サングラスをした青くて小さいG様みたいな男の人が立っていた。

「誰がゴキブリじゃ!」
「え?」
「わしは界王じゃぞ、心ぐらい読めるわい」
「え、界王様!?」

 目の前のG様男は界王様だった。

「あ、えと、今回は何で私なんかを呼んだんですか?」
「ふむ、お前に会いたいという男が居っての、ついてきなさい」

 界王様はここからでも見える小高い丘へと飛んで行ったので、私もそれに続いた。










「――え?」


 付いて行った先にいたのは、バーダックさんやターレスさんと同じ顔の形をした男。
 髪の色は黒になってたし、形も違うけど、印象的なオレンジの胴着は変わらない。

「孫、悟空……?」

 私が名を呼ぶと、孫悟空は眉をハの字させて申し訳なさそうに笑った。

「おめぇかあ。オラのかめはめ波で死んじまったのって」
「ええ、まあ……」

 孫悟空の頭に浮かぶわっかは死人の証。そういえばセルゲーム中孫悟空が消えて二度と現れなかったが、死んでいたのか……。

「ピッコロにも言われたけど、やっぱオラだめだなあ。悟飯にも辛ぇ目にあわしちまったし、何の関係もねえのにおめぇを殺しちまった」

 そう言った彼の目には、閻魔様と一緒に見た時の楽しそうな輝きは少しもなかった。(セルへの降参の意を示した時も失わなかった輝きがだ)

「別にあなたに悔いてもらいたいわけではありません。今回私は、生き返ろうと思えば出来ました。私は自分で死を選んだんです」
「……」

 へら、と情けなく笑う孫悟飯は、「悪いなあ」と頭を下げた。


 溜め息が出た。見た感じ、何があっても気にしなさそうな顔をしていると思ったのに、とんだネガティブ野郎だ。

「まあそう言うな。悟空も色々考えているんじゃよ」

 界王様が言った。また心を読んだのか、G様は。

「……ともかく、なまえの言うとおりだ。本人も気にしておらんのにそんなネガティブになっては、相手が気を悪くするだけじゃぞ」
「――そうだな、悪い」
「だからいいってば」


 孫悟空はいきなり、よし、と意気込むと自分の両頬を強くはたいた。


「そういえばおめぇ、舞空術出来んだな。武術やってたんか?」
「舞空術?」
「空飛ぶやつだよ」
「ああ、いや、二、三ヶ月前にある人達に教えてもらって……」
「誰なんだ? 強えか? そいつら」
「いや、強いというか何というか……ザーボンさんとドドリアさんてご存じですか?」

 たしか二人の証言によれば二人は孫悟空と直接は会っていないはずだ。
 二人が殺されてから、孫悟空はその場に到着したそうだから。


「んー。聞いたことあるような気もすんなあ。他にオラが知ってるような奴とかいねえのか?」
「……」
「どうした?」
「驚かないでくださいね」
「ああ? うん」
「フリーザさんやギニューさん達やセルさんやラディッツさんとも仲良くさせていただいてます、はい」


「……えええええ!」




なんだその目!
強くない! 私強くないです!
修行とか無理ですぎゃー!






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