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突発
海賊夢その3


「ふーん、海にねえ」
「小さな島に泊めてもらったりして今まで生きてきましたが、どうにも限界だったみたいで」

 口から嘘をぺらぺらと吐く私の前に座る男はヨーキ。そう、あのキャラコのヨーキだ。

 ──なんてこった。かなり危険な世界じゃないか。

 私はあの光に包まれ、次に目を開けたときルンバー海賊団のクルーに囲まれていた。
 なぜルンバー海賊団だとわかったかは聞かないでほしい。あのアフロは予想以上にでかかった。

 頭に(知らない間に)入り込んでいる知識を信用するなら、私はこの船の甲板に倒れていたようだ。
 そして冒頭に戻るわけだ。

「お前、音楽は好きか?」
「え? あ、まあ……」
「楽器は?」
「ピアノとオカリナが少し。専門は歌なんで」
「ほー。歌か。体力のほうは?」

「え。船長、この女を入れるつもりですか?」

 なんか小さめな人が声を上げた。
 確かにそうだ。私も怪しい雲行きを感じてきたぞ。わけのわからない女を船に上げるのは危ないんだからな!

「スコッチよ、お前はこの船がたかだか女スパイひとりのせいで沈むような船だと思ってるのか?」
「え、あ、いや……絶対無いと思いますけど」
「どーせ野郎ばっかでむさっくるしい船だ。女の一人ぐらいいいじゃないか。もし本当に女スパイだったら」

 夜の慰めにでも使えばいいだろ、とヨーキは笑顔でのたまった。
 いい男なのに。言うこと海賊なんだもんな。海賊だけど。

 いやいやいや。ちょっと待てよ私。
 あ、いやうんでも……。

「というわけだ女。どーせ行くところもないんだろ?」
「そうです、けど」

 この海賊団の末路を、私は知っている。
 たったひとりで何十年も時を過ごすことになるアフロがいることも、それを待ちながらレッドラインに頭突きを続けるクジラがいることも。
 私は何が出来る? もうこの世界からは逃げられない。
 どこかの地図にも乗らないような無人島で箱男のように暮らすのが一番平和か、とも思った。
 でも私は今、どこにいる?

「けど、なんだよ?」
「私、足手まといになると思いますよ?」
「はなから女に戦力は期待してねえよ。お前が胸なのか筋肉なのかわからないくらいのムキムキ女だったらまだしも、な」

 本当は戦力になるけど。多分。
 私にはその覚悟がまだない。でも、ひとつだけ覚悟できたことがある。

「じゃあ……よろしくおねがいします」

 少なくとも、原作で行方のわからなくなったヨーキ、もとい、ヨーキ船長含む数名だけでも救えたら。
 私にはその力がある。

 わかってる、単なる自己満足だ。
 だがいいじゃないか、そもそも私はここに存在しないはずの人間だから。
 好きに生きさせてもらう。それでいいじゃないか。


 ねえ、自称神様。



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やっぱり書きたくなってきた
ちゃんと原作沿いにはなる予定だけど

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