突発
海賊夢
何の冗談なんだ。
雲一つない吸い込まれるような青空の下で。
私は死んだ。
死んだ、という過去形は正しくない。
今の状況を正確に表現するとすれば「死んでいる」か「死につつある」か、とにかく進行形にするのが一番だろう。
私は目の前に浮いている自分の体をぼんやりみていた。
「ザ・ワールド、なんちゃって。なんじゃこりゃ」
この瞬間に至るまでを整理しよう。
いつも通りに帰宅していた。この春通い始めた専門学校からだ。
さあそこで私は道路を見た。なんということだ! 白い毛並みの眩しい狐が今にもトラックにひかれようとしている!
なんでこの大都会とはいかないまでも自然と縁もゆかりもない街中に狐がいたのか分からなかったが、私はそれを疑問に思う前に飛び出した。
そうして間抜けなことに私はそのトラックにひかれ、今に至る。
要するに私の体や周りの景色は、私のひかれた瞬間の状態のまま止まっていた。
そしてそれを見つめてる、私。状態的には理解不能。
「そして時は動き出す……動き出さねえか」
「おんし、先刻から何をやっておるのじゃ」
「え」
いま、私以外に動くものはないと思っていたこの世界に、私以外の声が響いた。
見ると、私(死につつある方の私だ)が抱えている狐がふわりと腕から飛び出した。
「え、狐? 喋ったの狐?」
「狐か……今はそうか。そうじゃな。狐だ。他に質問は?」
他って……上げだしたらキリがない気がしてくるぞ。まあ待て私、状況から整理しよう。
「私は死んだ?」
「ああ……間に合わなかったようじゃ。申し訳ない」
「時を止めてるのはあなた?」
「そうじゃ」
「私が死んだことに対してあなたが謝る理由は?」
「わしのせいだからじゃ。本来、わしは人間の目に見えてはならん。おんしに見えてしまったのはわしのミスじゃ」
「……あなた、何者?」
「わしは神じゃ」
冗談はエイプリルフールだけにしろ。
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