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突発
金属歯車夢
 その日、目を覚ましたらリビングに女の子供が座っていた。


 スラム街まがいなこの場所でマンションの部屋を借りて過ごし始めたのはごく最近だ。
 知り合いに子持ちなんて数年前の一件で知り合ったオルガと雷電くらいで、片やあの世、雷電達も今はどこでなにしているやらだ。
 オルガの子供はあのあと雷電が助け出して今はオタコンの所にいるはずだし、雷電達はここを知っているはずがない。

 同じマンションの住人の子供が買い物帰りに家を間違った……俺が鍵を掛け忘れたとでも?
 もしも知らない誰かの侵入を許したとしたら俺は立ち直れないぞ。
 無理があり過ぎるこの状況、俺の頭は完全フリーズだ。


「おじさん、だれ?」

 熊の縫いぐるみを抱いて一人用のソファに座っている子供は、特有の疑いを知らない眼で俺を見て言った。
 ――それはこっちが聞きたい。

「……プリスキンだ。お嬢ちゃんはどうしてここに?」
「んーと、わかんない」
「誰かに連れて来てもらったのか?」
「うん。眼鏡のお兄ちゃん」
「眼鏡?」



 眼鏡の知り合いは一人しかいない。

「あー、わかった。そこで待っててくれるか?」
「うん。お兄ちゃんがおじさんの言うこと聞くんだよって言ったから」
「そうか。……そこにある牛乳なら飲んでも良いからな」

 俺はいつもよりも大股で寝室に急いだ。
 ナノマシンの通信を子供の前でする訳にもいかない。(見た目突っ立っているだけなのは不格好すぎる!)


 しばらくの呼び出し音のした後に聞こえたのは数週間ぶりに聞く相棒の声。それは嫌に陽気な声だった。

「やあスネーク。久しぶりだね。あ、今はプリスキンかな?」
「どっちでもいい。それより、あの子供は何なんだ!」
「あれ、もう僕ってバレたの?」
「知り合いに眼鏡はお前しかいない」
「あー……うん。そうだね」

 眼鏡の、は言わなきゃ良かったかな、と小声で言うオタコン。残念だが聞こえている。

「何の真似なんだ。不審者の侵入を許したのかと思ってかなりへこんだんだぞ、俺は」
「あはは、ごめんごめん。でも起きそうだったからちょっと麻酔を使わせてもらったよ。体に不調はないかい?」
「麻酔っ!? 例の強力な?」
「まさか。そしたら君、まだ数時間は寝れるよ」

 なんてことをする奴だ。随分こいつと相棒しているが、こんなことをする奴だとは思わなかった。絶交だ。


「……それで、あの子供は何なんだ?」
「ああ、彼女は『存在しない子』だ」
「はあ?」


 一昨日、オタコンはあの子供を拾ったらしい。
 真夜中に通りのど真ん中で突っ立ってるのを見つけ、て保護した。近くの孤児院から抜け出したのかと尋ねたがそれも違い、放って置く訳にもいかず連れ帰った、というのが昨日までの経緯だ。

「まあ僕もそんな子供を育てるほどの余裕はないからね。早く身元を調べようかと思ったんだけど……」


 ――ないんだ、何も。

「何の手掛かりもつかめないんだ。彼女の名前さえね」

 俺やリキッド達ですら、「恐るべき子供達」計画で生まれたという記録が残っているのに、あの子供の場合は生まれた記録すらどこにも存在しない、とオタコンは言った。

「あの子自身も、自分が何者でどこからきたのか覚えてないみたいだし。八方塞がりなんだ」




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ってゆうトリップ書きたい

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